生命保険の告知義務違反とは?該当するケースや違反しないための対策方法を解説
公開日:2026年3月25日

万一の備えである生命保険。加入する際には、健康状態についていくつかの質問に答えることになっています。健康状態に関する事実をありのままに申告する「告知義務」があるからです。過去に病歴があると、どこまで申告すべきか、もし告知義務違反をしてしまったらどうなるのだろうかと心配になる人もいるでしょう。自分に必要な保障を確保するには、契約時に健康状態を正確に告知することが重要です。告知漏れや虚偽の申告は告知義務違反とみなされて、保険金が支払われないこともあります。
本記事では、生命保険契約時の告知内容や、告知義務違反に該当するケースにはどのようなものがあるか、該当した場合はどうなるのかを解説します。
※第一ネオ生命の告知内容の紹介ではありません。
生命保険の告知義務違反とは?
生命保険の申込みの際に、告知書に記載された質問事項に対して事実をありのままに回答することを告知義務といいます。
質問は、契約者または被保険者の過去の傷病歴や現在の健康状態、身体の障害など健康に関することが中心です。保険会社にとっては、保険を引き受けるかどうかを判断する重要な事項です。事実を告知しなかったり、事実と異なる告知をしたりすると告知義務違反になります。
告知義務違反には、保険を契約するために故意に事実を告知しなかったり虚偽の告知をしたりするケースだけではなく、うっかり忘れていたなど重大な過失によって告知しないケースもあります。いずれの場合も告知義務違反とみなされます。
事実を告知しなければならないという告知義務は、保険法第4条や37条、第66条にも定められています。
生命保険は、多数の契約者が保険料を払うことで成り立っている相互扶助の仕組みです。健康状態がよくないなどリスクの高い人が正直な申告を行わないと、保険料を公平に算定することができません。生命保険への加入を希望する人は事実を告知する必要があるのです。
生命保険の主な告知内容
生命保険を契約する際に告知する内容にはどのようなものがあるのでしょうか。告知の内容は、生命保険会社や保険の種類によっても異なります。以下は一例として参考にしてください。
・現在の健康状態
現在、治療や投薬、経過観察など診療中の病気はないか、医師の診察を受けた結果、入院や手術を勧められているか、最近、医師の診察や検査を受けて治療や投薬をしたかなどを告知します。どれくらいの期間を最近とするかは、生命保険会社によって異なります。例えば3か月以内や6か月以内などです。
健康診断や人間ドックで指摘があったか、再検査や精密検査を勧められていないかを告知内容に含める保険会社もあります。
また、女性の場合は妊娠しているかどうかを聞かれることがあります。
生命保険会社は、現在の健康状態を把握することで、加入者の健康リスクを評価し、契約を引き受けるかどうかや契約の条件を判断します。
・過去の傷病歴
過去に、病気やケガで入院・手術をしたことがあるか、治療や投薬を受けたことがあるか、がんなど特定の病気での治療や投薬歴があるかを告知します。過去は2年以内や5年以内などの一定期間を定めて質問する形が多いようです。
現在は治療を終えて完治していても、過去の傷病歴をもとに将来の健康リスクを予測できるケースもあるからです。正確な傷病名、治療期間、経過などを申告します。
・身体障がいの有無
保険会社や保険の種類によっては、身体障がいの有無と、身体障害がある場合はその内容についても告知の対象となります。障がいの部位や原因、障害等級などを申告します。
障がいの内容によっては保険金や給付金が支払われる保険もあるので、保険会社にとっては必要な情報となります。
・職業
仕事の内容によりケガや死亡のリスクが異なります。例えば、高所作業や危険物を扱う仕事はリスクが高くなります。リスクの高い職業の人が無条件で加入すると、他の加入者との公平性を保てなくなります。そのため、保険会社では保険の引き受けを制限したり、保険料を割増したりすることがあります。リスクを把握するために職業や具体的な仕事内容、勤務先なども告知の内容に含まれます。
生命保険の告知義務違反に該当するケース
告知義務違反と見なされやすいケースにはどんなものがあるのでしょうか。事例をいくつか紹介しましょう。
・健康診断結果の指摘を隠す
健康診断や人間ドックを受けた結果、再検査や精密検査をするよう指摘されたにもかかわらず、この事実を隠すと告知義務違反に該当します。
生命保険会社では、健康診断や人間ドックの結果を健康リスクの情報として重視しています。異常の指摘は将来の入院や手術のリスクを高めると考えられるからです。
指摘されたことを意図的に隠したり、異常はなかったと虚偽の申告をしたりすると、事実の不告知や虚偽の告知と見なされます。
・過去の通院歴を申告しない
告知書の質問において、指定された期間内の病気やケガによる医師の診察、検査、治療、投薬の事実をありのままに申告しないことは告知義務違反となります。
例えば、高血圧や糖尿病で定期的に通院して薬を処方されていたことを隠した場合が該当します。本人は完治したと思い込んでいても、告知書の質問事項に該当する場合は、きちんと申告しないと告知義務違反と判断される可能性があります。
・症状を軽視して申告内容を変える
実際よりも症状を軽く申告したり、内容を変更して申告したりすることも告知義務違反になります。医師からは入院や手術を勧められているのに、その事実を隠す、検査を受けただけなどと内容を変更して告知することが当てはまります。保険に有利に加入するために虚偽の告知をしたことになります。症状については勝手に判断せず、医師から受けた診断や指導をそのまま伝えなければなりません。
生命保険の告知義務違反はどうやって発覚する?
告知義務違反が発覚するタイミングとして多いのは、保険金や給付金を請求したときです。
加入者が保険金や給付金を請求すると、生命保険会社では支払事由に該当するか、告知義務違反がなかったかを調査します。医療機関に問い合わせたりカルテを確認したりすることがあります。加入者本人(患者本人)の同意を得た上で健康保険の履歴を参照することもあります。健康保険の履歴には、利用した医療機関や診療の時期など保険診療の記録が残っていますから、告知していなかった病歴がわかってしまいます。健康保険の履歴を確認する際には健康診断の結果も閲覧できます。このような調査の結果、告知義務違反が発覚してしまうのです。
また、過去に申し込みをしたことがある生命保険会社では、申込履歴や審査記録が残っています。同じ生命保険会社の別の保険に申し込み、告知の内容が異なると、告知義務違反が発覚する可能性があります。
保険金や給付金を請求したときだけでなく、加入審査で告知義務違反が発覚することもありますので正直に告知しましょう。
生命保険の告知義務違反に該当した場合
告知義務違反が発覚したらどうなるのでしょうか。
・保険金や給付金が支払われない
告知義務違反に該当した場合、保険金や給付金が支払われないことがあります。なぜなら保険会社は、事実が告知されていたなら保険契約を引き受けなかった、条件付きでしか引き受けなかったと考えるからです。受け取れると思っていた保険金や給付金をもらえなくなります。
>関連記事:生命保険の給付金とは?保険金との違いや主な種類、請求の流れをわかりやすく解説!
・契約が解除される
契約が解除される場合もあります。生命保険会社は、告知義務違反の事実を知ったとき、原則として責任開始日(復活の場合は復活日)から2年以内であれば、生命保険の契約を解除できるからです。ただし、2年を超過していても、保険金や給付金の支払事由が2年以内に発生していた場合や、告知義務違反の内容が重大であると判断された場合は契約解除となります。
さらに悪質であると判断された場合は契約が詐欺取消となり、保険料が戻ってこない可能性があります。尚、告知義務違反で解除されても、「未告知事実」と「事故」との因果関係がなければ支払義務が残ります(因果関係不存在特則)。
生命保険の告知義務違反をしないための対策方法
告知義務違反をするつもりがなくても、意図せずに告知義務違反になってしまうこともありえます。そうならないための対策方法を解説します。
・過去の記録を確認しながら記入する
自分の記憶だけで傷病歴や通院歴を告知書に記入するのはおすすめできません。忘れていたり、時期がずれていたり、記憶はあいまいになりやすいからです。お薬手帳や健康診断の結果、診療明細書などの客観的な資料を手元に用意しましょう。これらを確認しながら記入していきます。
告知書には、「過去○年以内」などと期間が指定されている質問があります。正確な日付を確認するとともに、病名や治療内容を資料で確認することで、申告漏れや事実と異なる告知を防ぐことができます。
・告知すべきか迷ったら保険会社に相談する
重症ではなく軽い症状だったから、何年も前のことだしなど告知をすべきかどうか迷うときは、自己判断ではなく保険会社のコールセンターや窓口に相談しましょう。
生命保険会社に直接問い合わせることで告知すべきかどうかを明確にすることができ、告知義務違反を回避できます。
告知漏れに気付いたときの対応方法
告知漏れがあることに気づいたら、すぐに契約中の保険会社に連絡しましょう。担当者やコールセンターに告知漏れがあることを伝えて、追加告知の手続きを行います。
告知は通常、生命保険会社の告知書に記入するか、生命保険会社が指定した医師と面談しながら行います。営業担当者や保険代理店の担当者などに口頭で告げても正式な告知にはなりません。生命保険会社からの指示に従って追加告知書の提出など所定の手続きを行います。
追加の告知を行わないまま放置すると告知義務違反と見なされ、保険金が支払われない、契約解除となるリスクがあります。気付いた時点ですぐに保険会社に連絡しましょう。
まとめ
必要な保障を確保するには、生命保険の契約時に健康状態や職業など告知すべきことを正確に告知書に記入することが重要です。事実とは異なる告知をしてしまい、告知義務違反に該当すると、保険金の支払いが受けられず、契約が解除になるリスクがあります。これを避けるには、お薬手帳や診療明細書、健康診断の結果などの資料をもとに事実を正しく告知します。また、告知すべき内容かどうか迷ったときには生命保険会社に相談することです。
告知漏れに気付いたときは、すぐに生命保険会社に連絡して正しい内容で追加告知を行いましょう。
この記事の情報は2026年1月時点


ファイナンシャルプランナー(CFP®)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
坂本 綾子(さかもと あやこ)
雑誌記者を経て2010年ファイナンシャルプランナーとして独立。執筆やセミナー講師を行う。消費者からの家計相談にも対応。著書に「改訂新版 節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本」(朝日新聞出版)、「きみたちはどう稼ぐか?1杯のコーヒーをお金に換える方法」(中央公論新社)などがある。
