生命保険の給付金とは?保険金との違いや主な種類、請求の流れをわかりやすく解説!
公開日:2025年1月29日
「自分の身に何かあったときのために…」と多くの人が加入する生命保険。ところが、生命保険は私たちの生活に馴染みがないこともあり、「給付金と保険金は同じだと思っていた」「いざ給付金を請求する段階になって、やり方がわからず困った」という人は意外と多いのです。生命保険の給付金は受け取れないケースもあります。せっかく加入しているのですから、どういった場合なら給付金を受け取れるのかを知っておくことや、請求するときの必要書類や手順などはしっかり確認しておきたいもの。
この記事では、生命保険の給付金と保険金の違いや、主な給付金の種類、給付金の請求の流れについて解説します。保険金が給付されないケースについても解説しますので、参考にしてみてください。
生命保険の給付金とは
生命保険の給付金とは、被保険者(保障の対象となる人)が病気やケガで入院したり手術したりした場合などに、保険会社から受け取れるお金のことです。給付金は、複数回にわたり受け取れるものもあり、給付金を受け取っても保険契約は継続します。
そもそも、保険には公的保険と民間保険があり、病気やケガのリスクは、公的医療保険(健康保険)で保障されます。その主な給付には、医療費の負担が1〜3割に抑えられる「療養の給付」や、1か月の医療費が自己負担限度額を超えた場合には超過分を払い戻す「高額療養費制度」があります。このように、公的医療保険には自己負担分がありますが、医療費の負担を軽減してくれます。一方で、任意で加入する民間保険の給付は、公的医療保険だけでは補い切れない自己負担額の補填や、公的な医療保険の対象外となっている高度な医療の技術料、入院中の差額ベッド代など、多様なニーズに対応できます。
給付金と保険金の違い
生命保険の保険金とは、被保険者が高度障害状態になったときや死亡したときに、保険契約者または受取人が保険会社から受け取れるお金のことです。病気やケガをしていなくても、保険契約が満了になったときに受け取れる満期金も保険金に含まれます。保険金が受け取れるのは、原則として1回のみで、保険金を受け取ると保険契約は終了します。
受取回数が1回限りの「死亡保険金」を「死亡給付金」としている生命保険もあり、保険金と給付金は厳密に使い分けられているわけではありませんが、受取回数や契約の継続の有無が、給付金と保険金を見分けるポイントになることを知っておくとよいでしょう。
主な給付金の種類
生命保険の給付金には、さまざまな種類があります。ここでは、医療保険とがん保険の給付金の種類を解説します。
医療保険の給付金の種類
保険会社の医療保険では、病気やケガで入院したり、所定の手術や放射線治療を受けたりしたときに給付金を受け取ることができます。
主な給付金には、次のようなものがあります。
<給付金の種類と給付内容>
種類 | 内容 |
疾病入院給付金 | 病気で入院したときに給付される |
災害入院給付金 | 災害や不慮の事故から180日以内に入院したときに給付される |
手術給付金 | 病気やケガで所定の手術を受けたときに給付される |
通院給付金 | 退院後の通院が必要な場合に給付される |
放射線治療給付金 | 所定の放射線治療を受けたときに給付される |
女性疾病入院給付金 | 女性特有の病気で入院したときに給付される |
三大疾病一時給付金 | がん・心疾患・脳血管疾患になったときに給付される |
先進医療給付金 | 厚生労働省が認める「先進医療」に当てはまる治療を受けたときに給付される |
がん保険の給付金の種類
がん保険では、がんと診断された場合や、がんで入院したり手術を受けたりした場合に給付金を受け取ることができます。がん保険は、一般的に契約してから90日の待機期間(待ち期間)があります。この期間中にがんと診断されても、給付金を受け取ることができないことに注意が必要です。
主な給付金には、次のようなものがあります。
<給付金の種類と給付内容>
種類 | 内容 |
がん診断給付金 | がんと診断されたときに給付される(1回のみと複数回がある) |
がん入院給付金 | がんの治療を目的として入院したときに給付される |
がん手術給付金 | がんで所定の手術を受けたときに給付される |
がん放射線治療給付金 | がんで所定の放射線治療を受けたときに給付される |
抗がん剤治療給付金 | がんの治療目的で抗がん剤治療を受けたときに給付される |
給付金の請求の流れ
「入院した」「手術した」「がんと診断された」といった場合、給付金の請求はどのようにすればよいのでしょうか。ここでは、給付金を請求するときの4つの手順について解説します。
1.契約内容の確認および生命保険会社への連絡
入院・手術給付金などを請求する場合は、「保険証券」や「契約のお知らせ」など契約内容がわかるものを用意します。給付金は受取人本人からの請求することになっていますが、一般的に受取人は被保険者となっていることでしょう。そのため、被保険者本人が生命保険会社の担当者やサービスセンター、コールセンターなどに連絡します。
近年は、生命保険会社のホームページから給付金の請求書類を請求できたり、請求手続き自体をオンラインで完結できたりする保険会社も多くなっています。ご自身が加入している生命保険会社の公式サイトで、どのような請求方法があるのかを確認しておくとよいでしょう。
なお、保険会社に連絡すると、一般的に次のような項目を確認されます(電話・インターネット共通)。
・証券番号 ・名前、生年月日、住所など(本人確認) ・請求内容(入院・手術・通院など) ・請求原因(病気・事故など) ・入院期間(入院日と退院日)※入院した場合 ・手術日と正式な手術名 ※手術した場合 ・先進医療による治療の有無 |
また、被保険者本人が傷病名の告知を受けていないときや、傷病によって給付金の請求をする意思表示ができないときなどは、本人から連絡することが難しいこともあります。このような場合には、契約者があらかじめ指定した代理人(指定代理請求人)が、被保険者に代わって給付金の請求手続きを行えることがあります。指定代理請求人は誰でもなれるわけではなく、保険会社ごとに指定代理請求人の範囲は定められていますので、その範囲を確認して指定代理請求人を設定しておきましょう。
2.請求書類の取り寄せ・提出
生命保険会社に電話で連絡をした場合は、今後の請求手続きの流れについて説明を受けたあとに、給付金の請求に必要な書類が郵送されます。インターネットで郵送を依頼できる生命保険会社もあります。この場合は、給付金を申請する際に必要な事項をインターネット上で入力し送信すると、生命保険会社から請求書類が郵送されます。生命保険会社によっては、ホームページから給付金の請求に必要な書類をダウンロードできる保険会社もあります。給付金の請求を急ぐ場合は、生命保険会社に郵送を依頼するのではなく、請求書類をダウンロードするとよいでしょう。
・給付金の請求に必要な書類とは
生命保険会社から取り寄せる書類には、主に次のようなものがあります。
・給付金請求書 ・入院・手術等証明書(診断書) |
いずれの書類も各保険会社所定の用紙となっています。給付金請求書には、証券番号や請求者の氏名、住所、連絡先、請求内容(傷病名や手術名など)、給付金の振込先などを記入します。
診断書は、医師に渡して作成してもらいます。原則として、生命保険会社が指定したフォーマットを使うことになっていますが、病院所定のものでも受け付けてもらえることもあります。ただし、診断書の記載内容に不明な点や不足する内容があるときは、あらためて生命保険会社所定の診断書原本を提出しなければならないことがあります。
病院によっては、診断書の作成に数週間程度を要するところや、郵送でのやりとりができず、病院を訪れて申請と受け取りをするところもあるため、給付金を請求する前に、診断書の発行期間や手順について聞いておくと円滑に手続きが進められます。
また、請求する給付金が一定額以下の場合や入院日数が短い場合など一定の条件を満たすと、診断書を提出しなくても、簡易的に給付金を請求できる場合があります。生命保険会社所定の自己申告書(名称は各保険会社によって異なる)と医療機関の窓口で発行される治療費の領収書・診療明細書のコピーで代用できるため、通常の請求にくらべて、給付金の受け取りまでの日数を大幅に短縮することができます。
給付金の請求に必要な書類は治療内容などによって異なりますが、すべて揃ったら生命保険会社に提出します。
3.生命保険会社による審査
生命保険会社は、提出された給付金請求書や診断書などの内容と約款を照らし合わせて、給付金の支払対象に該当するかどうかを審査します。
4.給付金の受け取り
支払対象に該当し、提出した書類や記入内容に不備がないと判断されたら、あらかじめ指定した振込口座に給付金が振り込まれます。その後、数日程度で生命保険会社から給付金の受取内容と金額の明細書が送付されます。給付金が振り込まれるまでの期間は、基本的には医師の診断書があるため審査に時間がかかることは少なく、生命保険会社に書類が到着した翌日からその日を含めて5営業日以内となることが多いです。ただし、診断書の内容等によっては医療機関へ照会することもあり、給付まで時間がかかる場合もあります。なお、給付金が受け取れない場合には、その理由について書面などで通知されます。
給付金を受け取れない場合とは?
給付金が受け取れない場合には、どのようなケースがあるのでしょうか。「ご契約のしおり・約款」などに記載されている代表例を解説します。
支払事由に該当しない場合
付金が受け取れるのは、約款に定められた支払事由に該当した場合です。したがって、約款に定められた支払事由に該当しない場合には、給付金は受け取れません。たとえば、入院給付金や手術給付金が受け取れないケースには、次のようなものがあります。
・責任開始期前の発症
入院給付金と手術給付金は、保険契約の責任開始後に発症した病気または不慮の事故による傷害を原因として入院・手術した場合に受け取れます。そのため、責任開始期より前に発症していた傷病が悪化して入院・手術した場合は、どちらの給付金も受け取れません。ただし、責任開始から一定期間を経過した後(通常は2年経過後)に入院・手術した場合には、責任開始期以後に発生したものとみなして、入院給付金・手術給付金を受け取れる場合があります。
・支払限度日数または通算の支払限度日数の超過
入院給付金は、契約により1回の入院に対して支払われる限度日数が定められています。そのため、その日数を超えた入院については、入院給付金を受け取れません。なお、契約によっては、同じ病気で2回以上の入院をした場合、いったん退院して一定期間内に再入院すると、1 回の入院とみなし入院日数を合算します。その場合、支払限度日数を超えた部分は入院給付金の給付対象外となります。
・約款に定める手術に該当しない場合
手術給付金は、公的医療保険制度における医科診療報酬点数表に、手術料の算定対象として列挙されている手術に該当すると受け取れます。たとえば、レーザーによる近視矯正手術(レーシッ ク等)を受けた場合は、上記に列挙されていない手術のため、手術給付金は受け取れません。ここに列挙されている手術であっても、虫歯や親知らず、歯周病治療などの通常の抜歯術や、切り傷などの傷口を縫い合わせる処置などは手術給付金の対象となりません。
免責事由に該当した場合
支払事由に該当しても、約款に定められた免責事由に該当する場合には、給付金を受け取れません。たとえば、死亡給付金が受け取れない免責事由には、責任開始日から一定期間内(1年~3年)に自殺した場合や、保険契約者または死亡給付金受取人の故意によって死亡した場合があります。また、被保険者が法令に定める酒気帯び運転またはこれに相当する運転をしている間に起こった事故で入院・手術した場合は、入院給付金も手術給付金も受け取れません。
告知義務違反による解除の場合
保険契約時に、そのときの被保険者の健康状態や過去の傷病歴について、正しい告知がされていなかった場合は、特約や契約が解除されることによって給付金を受け取れない場合があります。
まとめ
生命保険の給付金とは、被保険者が医療保険やがん保険などで、手術を受けたり入院したりした際に受け取れるお金のことです。複数回受け取れることがあり、その後も契約は継続します。ただし、給付金を受け取れない場合もあるので注意が必要です。給付金を受け取るための手順や必要書類を理解し、確実に受け取れるようにしましょう。


(ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、定年力アドバイザー、相続手続カウンセラー)
中山弘恵(なかやまひろえ)
生活に関わるお金や制度をテーマにした講師業務、執筆業務、個別相談業務に従事。「わかりやすく丁寧なセミナー」「ストレスなく読み進められるわかりやすい文章」「安心しながら気軽に話せる相談相手」として定評がある。