公的介護保険制度とは?対象となる人や受けられるサービス、自己負担割合を解説
公開日:2026年7月10日

高齢化が進み、介護は誰にとっても身近な問題となっています。実際に、加齢や病気、認知症などをきっかけに、本人や家族が介護と向き合うケースは少なくありません。介護が必要になった場合、公的介護保険制度を利用することで、訪問介護やデイサービスなど、さまざまな介護サービスを一定の自己負担で受けられます。一方で、制度の仕組みや利用できる人、サービス内容、費用負担などを十分に理解している方は多くないでしょう。
本記事では、公的介護保険制度の基本的な仕組みや対象者、受けられるサービス、自己負担割合などについて分かりやすく解説します。
※本記事では介護保険・認知症保険についてご紹介しておりますが、情報提供を目的としているため、当社の商品は記載しておりません。予めご了承ください。
公的介護保険制度とは?
公的介護保険制度とは、40歳以上の人が保険料を負担し、介護が必要になった際に必要なサービスを受けられる社会保障制度のひとつです。高齢化が進む中、介護を家族だけの問題とせず、社会全体で支える仕組みとして2000年に創設されました。制度の運営主体は市区町村です。被保険者は要介護認定を受けると、訪問介護やデイサービス、施設での介護などの各種サービスを利用できます。利用者は所得に応じて、かかった費用の原則1~3割を負担し、残りは保険料や公費によって賄われます。
公的介護保険制度の対象となる人は?
公的介護保険制度の対象者は、「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の2つに分けられます。
第1号被保険者は、65歳以上の人が対象です。加齢による衰えや認知症、病気など、原因を問わず要介護・要支援状態と認定された場合に介護サービスを利用できます。一方、第2号被保険者は、40歳以上65歳未満の医療保険加入者が対象です。ただし、介護保険を利用できるのは、加齢に伴う特定疾病が原因で介護が必要になった場合に限られます。対象となる特定疾病は、末期がんや関節リウマチ、脳血管疾患、初老期認知症などです。このように、公的介護保険制度は年齢によって利用条件が異なる点が特徴です。
公的介護保険制度で受けられるサービス
公的介護保険制度では、要介護認定などを受けることで、本人の状態や生活環境に応じたさまざまな介護サービスを利用できます。ここからは、公的介護保険制度で受けられる主なサービスをみていきましょう。
・居宅サービス
居宅サービスは、自宅などで生活しながら利用できる介護サービスです。代表的なものには、介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅などに訪れ、入浴や排せつ、食事などの介護や、日常生活を送る上で必要なサービスを受ける「訪問介護」や、これらの介護及び機能訓練などを受けるためにデイサービスセンターなどに通う「通所介護」、家族による介護が一時的に難しい場合に、短期間施設へ宿泊して介護を受けられる「短期入所生活介護(ショートステイ)」などがあります。
その他、車いすや介護ベッドなどの福祉用具のレンタル・購入支援を利用できるなど、自宅での生活を維持しながら必要に応じて複数のサービスを組み合わせられる点が特徴です。
・施設サービス
施設サービスは、介護保険施設へ入所して受ける介護サービスで、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設」「介護医療院」の3種類の施設があります。
特別養護老人ホームは、日常生活の介助を中心とした施設、介護老人保健施設は、リハビリに重点を置いた比較的短期の入所で自宅復帰を目指す施設、介護医療院は、継続的な医療管理と介護の両方に対応する施設となっており、それぞれ役割が異なります。
原則として要介護認定を受けた人が対象です。なお、特別養護老人ホームへの新規入所は原則として要介護3以上が対象で、要介護1・2の場合はやむを得ない事情がある場合に特例入所が認められることがあります。
・地域密着型サービス
地域密着型サービスは、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるよう市区町村が指定した事業者によって提供されるサービスです。認知症の人向けのデイサービスやグループホーム、小規模多機能型居宅介護などがあります。原則として、その市区町村に住んでいる人が利用対象となります。
・介護予防サービス
介護予防サービスは、要支援1または要支援2と認定された人を対象としたサービスです。介護予防を目的として、自立した生活を維持できるよう支援することを目的としています。介護予防通所リハビリテーションや介護予防訪問看護、介護予防に効果がある福祉用具の利用支援などがあり、身体機能の維持・改善を目指したサポートを受けられます。
・地域密着型介護予防サービス
地域密着型介護予防サービスは、要支援1・2の人が、住み慣れた地域で自立した生活を続けられるよう支援するサービスです。認知症の方向けの通所サービスや、訪問・通所・宿泊を組み合わせて利用できるサービスなどがあり、利用者の状況に応じた柔軟な支援を受けられます。地域密着型サービスと同様に、原則として事業所のある市区町村の住民が対象です。
公的介護保険制度の自己負担割合
公的介護保険制度では、介護サービスを利用した際の自己負担割合は原則1割です。ただし、一定以上の所得がある場合は、自己負担割合が2割または3割となります。負担割合は、本人の年金収入やその他の所得をもとに判定され、市区町村から交付される「介護保険負担割合証」で確認できます。
また、在宅サービスには要介護度ごとに利用できる支給限度額が定められています。限度額の範囲内であれば、利用者は原則1~3割の負担でサービスを利用できますが、限度額を超えた部分は保険給付の対象外となり全額自己負担となる点に注意が必要です。なお、介護保険施設を利用した際の食費や居住費は、原則として保険給付の対象外です。
ただし、低所得者については「補足給付(特定入所者介護サービス費)」により、食費や居住費の負担軽減を受けられる場合があります。
介護にかかる費用を抑える方法
介護には、住宅改修や福祉用具の購入などの初期費用に加え、毎月の介護サービス利用料など継続的な費用もかかります。生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、2人以上世帯における介護の一時的な費用の平均は47万円です。また、介護に要した月々の費用は、1カ月あたり平均9万円となっています。介護期間の平均は55カ月(約4年7カ月)と比較的長期にわたることから、状況によっては介護費用が家計の大きな負担となることも否めません。
一方で、公的介護保険制度や各種の負担軽減制度を上手に活用すれば、自己負担を抑えられる可能性があります。以下で、介護費用を軽減する主な方法について見ていきましょう。
・介護保険の支給限度額内でサービスを利用する
居宅サービスを利用する際は、要介護度ごとに定められている「支給限度額」を意識することが、費用負担を抑えるポイントです。公的介護保険では、訪問介護やデイサービスなどの居宅サービスについて、1カ月あたりの利用上限額が設定されています。この範囲内であれば、利用者の自己負担は原則1~3割です。しかし、限度額を超えてサービスを利用した場合、その超過分は全額自己負担となります。
例えば、要介護1の支給限度額は月額約16万7,650円、要介護5では約36万2,170円です。利用するサービスが増えるほど費用も膨らみやすいため、ケアマネジャーと相談しながら、本当に必要なサービスを整理して無理のないケアプランを作成することが大切です。
・高額介護サービス費制度を活用する
介護サービスを継続して利用すると、毎月の自己負担額が大きくなる場合があります。そのような家計負担を軽減するために設けられているのが「高額介護サービス費制度」です。この制度では、1カ月間に支払った介護保険サービスの自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が後から払い戻されます。自己負担の上限額は所得区分によって異なり、一般的な所得の世帯では月額4万4,400円が目安です。低所得者世帯については、区分によって2万4,600円や1万5,000円とより低い上限額が設定されています。介護は長期間に及ぶことも多いため、こうした制度を知っておくことで、将来の費用負担への不安軽減にもつながるでしょう。なお、利用にあたっては申請が必要となるため、詳細は市区町村の窓口などで確認しておくと安心です。
・医療費控除を活用する
介護にかかった費用の一部は、医療費控除の対象となる場合があります。確定申告を行うことで、所得税や住民税の負担軽減につながる可能性があるため、領収書などは保管しておくと安心です。対象となる主なサービスには、訪問看護や訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションなどの医療系サービスがあります。また、訪問介護(生活援助中心型を除く)や通所介護などの福祉系サービスは、訪問看護や訪問リハビリテーションなどの医療系サービスと併せて利用する場合に限り、医療費控除の対象となることがあります。さらに、介護老人保健施設や介護医療院での利用料も対象です。
医療費控除は、1年間に支払った医療費などの合計額が10万円(総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%)を超えた場合に適用されます。対象となる範囲や計算方法には細かな条件があるため、不明な点は税務署や税理士などへ確認するとよいでしょう。
公的介護保険制度を利用する際の注意点
公的介護保険制度は、介護が必要になった際の大きな支えとなる制度です。ただし、制度の内容を十分に理解していないと、想定外の費用負担や希望するサービスをスムーズに利用できない場合があります。そのため、利用前に基本的な仕組みや注意点を確認しておくことが大切です。
介護保険の対象となるのは、本人の日常生活を支えるために必要な介護サービスです。そのため、本人の生活に必要な範囲を超える大掃除や家族分の家事、庭の手入れ、単なる家政婦的なサービス、安否確認だけを目的とした見守りなどは、原則として介護保険の対象外となります。
また、介護サービスには要介護度ごとの支給限度額が設けられており、限度額を超えた分は全額自己負担です。さらに、介護サービスを利用するには要介護認定の申請が必要となり、申請から認定結果の通知までには一定の期間を要します。介護が必要になってから慌てないよう、事前に制度を理解し、ケアマネジャーと相談しながら計画的にケアプランを立てることが重要です。
民間の介護保険で備える必要はある?
公的介護保険制度を利用することで、介護費用の多くはカバーされます。
しかし、自己負担分に加え、支給限度額を超えたサービス利用料、施設入所時の食費・居住費などは自己負担です。介護期間が長引くと家計への負担が大きくなる可能性があるため、公的介護保険だけでは不足する費用への備えとして、民間の介護保険を活用するのはひとつの方法です。
民間の介護保険には、所定の要介護状態になった際に一時金や年金形式で給付金を受け取れる商品などがあります。給付条件は保険会社ごとに異なり、公的介護保険制度の要介護認定と連動するタイプのほか、独自基準を採用している商品もあるため、加入時には保障内容や支払条件を確認しておくことが重要です。
また、近年は認知症への備えとして「認知症保険」を取り扱う生命保険会社も増えています。認知症保険は、認知症と診断された場合などに給付金を受け取れる仕組みで、介護費用や生活費の補填に活用できます。さらに、介護によって家族が離職・働き方の変更を余儀なくされる、いわゆる「介護離職」のリスクもあります。介護費用そのものだけでなく、収入減少への備えという観点から、民間保険を検討するケースもあるでしょう。もっとも必要な保障は、家族構成や資産状況、将来の介護への考え方によって異なります。公的制度でカバーできる範囲を確認したうえで、自身に合った備えを検討することが大切です。
まとめ
公的介護保険は、40歳以上の人が加入し、介護が必要になった際に社会全体で支え合う制度です。訪問介護やデイサービス、施設介護などのさまざまなサービスを、原則1~3割の自己負担で利用できます。ただし、居宅サービスには要介護度ごとに支給限度額が設けられており、限度額の範囲内であれば1~3割負担で利用できますが、超えた分は全額自己負担となる点には注意が必要です。
介護にかかる費用や必要なサポートの内容は、本人の状態や家族構成によって大きく異なります。場合によっては、家族の介護負担や介護離職など、生活や働き方に影響を及ぼすケースもあるため、早めに情報収集を行い、家族で話し合っておくことも重要です。そのうえで、自身や家族の状況、資産状況なども踏まえながら、必要に応じて民間の介護保険や認知症保険などを活用し、公的制度だけでは不足する費用に備えることも選択肢です。まずは制度の仕組みを正しく理解し、自身や家族の状況に合わせた備えを考えてみましょう。
- この記事の情報は2026年5月時点


ファイナンシャルプランナー(CFP®)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種
白浜 仁子(しらはま ともこ)
1989年地方銀行に就職。結婚、出産を経て2008年より独立系FPとして始動。家計、資産運用、住宅購入、生命保険など幅広い視野でコンサルティングを行うライフプランの専門家。また、障害を持つ子の親亡き後問題やおひとりさまの終活サポートも行なっている。
