失業保険(基本手当)とは?受給条件や手続きの流れを解説
公開日:2026年7月10日

失業保険や失業手当と呼ばれる給付は、正式には雇用保険の「基本手当」です。離職した方が、生活の安定を図りながら再就職を目指すために支給されます。
本記事では、失業等給付の中でも特に退職時に気になる基本手当について、「受給できるのかどうか」「いくらもらえるのか」「どのくらいの期間受け取れるのか」といった点や、受給までの流れを解説します。あわせて押さえておくべき制度として、就職が決まったときにもらえる再就職手当についても紹介します。
※本記事では詳細な条件や例外などは記載しておりません。必要に応じてハローワークのサイトや住所地のハローワークの相談窓口などでご確認ください。
失業保険(失業手当)とは?
失業保険とは、雇用保険制度における「基本手当」(以下、「失業手当」)のことです。失業するとその後の給与がなくなり生活が大変ですから、所定の要件を満たしていれば、仕事を探している間の一定期間、雇用保険から給与がなくなる期間の生活を支えるために給付する、というのが失業保険の目的です。
自分が雇用保険に加入しているかどうかは、給与から雇用保険料が天引きされているかどうかで確認できます。
雇用保険は、原則として「1週間の所定労働時間が20時間以上」で、かつ「31日以上の雇用見込みがある」労働者が加入対象です。正社員だけでなく、条件を満たすパートやアルバイトも加入します。
実際に失業手当を受け取れるかどうかは、雇用保険の加入期間や退職の理由など様々な要因で異なります。
失業手当の受給条件
退職の理由によって「自己都合による退職(一般離職者)」「所定の理由での退職(特定理由離職者)」「会社都合による退職(特定受給資格者)」と区分がわかれるため、それぞれの違いを知っておくことが大切です。
【自己都合による退職】一般離職者の場合
一般離職者とは主に正当な理由のない自己都合退職や定年退職など、倒産・解雇等に該当しない理由で離職した人を指します。転職や結婚、資格学校に通うため、海外留学などさまざまなケースが一般離職者となります。失業手当を受給かどうかは過去の雇用保険加入実績(被保険者期間)によって決まります。
一般離職者は離職の日以前2年間に通算で12か月以上、被保険者期間があれば受給可能となります。
【所定の理由での退職】特定理由離職者の場合
特定理由離職者とは、主に「やむを得ない理由(正当な理由)」で自己都合退職する場合を言います。該当する「正当な理由」には、たとえば病気やケガ、家族の介護、配偶者の転勤についていくため、事業所の移転などさまざまなケースがあります。
受給要件は通常の自己都合退職よりも配慮され、離職日以前1年間に通算6か月以上の被保険者期間があれば要件を満たしたこととされます。
【会社都合による退職】特定受給資格者の場合
会社都合退職とは言葉通り、会社の倒産や解雇などが分かりやすい状況となります。それ以外に、給与の3分の1以上が期日よりも遅れた場合など生活が不安定になりかねないケースや、退職勧奨、ハラスメントなども会社都合に該当する場合があります。要件は厳格ですから、気になる場合はハローワークのサイトでの確認や、ハローワークの窓口で相談するなどしてみましょう。
受給要件は離職日以前1年間に通算6か月以上の被保険者期間があれば要件を満たします。
失業手当の給付日数
失業手当の給付日数は、離職理由、年齢、被保険者であった期間などにより異なり、原則として90日〜360日の範囲で決まります。なお、就職困難者を除く場合は最長330日です。
ここで言う被保険者期間は、今の会社に入社(雇用保険に加入)したときから離職までの期間を指します。例外として、過去に転職してブランクがあっても離職から再就職までの期間が1年未満で、その当時失業手当や再就職手当といった雇用保険からの給付を受給していなければ、前の会社での被保険者期間を通算できる場合があります。
・一般離職者・特定理由離職者の場合
一般離職者と特定理由離職者(有期雇用の一定のケースを除く←このケースは特定受給資格者を参照)は表のように年齢にかかわらず被保険者期間によって区分されています。
たとえば、5年勤務して自己都合退職をした場合90日分の給付日数があることになります。また、若い頃に入社して定年退職を迎えた場合は20年以上勤務していますから150日分の給付日数となります。
図表 一般離職者の被保険者期間と給付日数
※特定理由離職者は離職日以前1年間に6か月以上あれば該当
・特定受給資格者と一部の特定理由離職者の場合
特定受給資格者は急な離職となるケースが多いことから、再就職に向けた準備期間もないまま求職活動に突入することが想定されます。また特定理由離職者のうち、有期雇用だった人が本人の希望に反して更新できなかった場合なども、再就職までの期間が長引く可能性があります。そのためどちらのケースも表のように失業手当の受給日数は多めに設定されています。
図表 特定受給資格者(一部の特定理由離職者)の被保険者期間と給付日数
・就職困難者の場合
就職困難者とは、障害があるため求職活動が長引くことが想定される状況の人を指します。離職理由による違いはなく、表のように年齢と被保険者期間によって失業手当の給付日数が決められています。
図表 就職困難者の被保険者期間と給付日数
失業手当の給付額
失業手当の金額は人によって異なり、離職前6か月の平均給与をもとに、その日額の50%から80%(60歳~64歳は45~80%)の間で計算されます。もともとの給与が少ない人は80%など高めの割合で計算され、もともとの給与が高い人は50%など低めの割合になります。
失業手当は、失業中の生活を支えながら再就職活動を促すための給付であり、離職前の給与を全額補うものではありません。
また、「最低限の」サポートのため、表のように年齢によって上限が定められており、給与が高いと賃金日額の50%に満たない額にとどまることもありえます。
図表 賃金日額と基本手当日額の上限(令和7年8月1日現在)
(下限は年齢にかかわらず賃金日額3,014円、失業手当日額はその80%である2,411円)
失業手当の受給手続きの流れ
退職後、実際に失業手当を受給するためにはいくつかの手順を踏む必要があります。決められた日にハローワークへ行かなかったり、求職活動をしていなかったり、要件を満たせないと受給できないため注意が必要です。以下で受給のための流れを見ていきましょう。
1.必要書類を準備する
受給に必要な主な書類には以下のようなものがあります。
・離職票-1と離職票-2(ある場合)
会社から郵送や手渡しで受け取るものです。手元に届くまで2週間程度かかることもあるため、受け取れる時期をあらかじめ会社に確認しておくと良いでしょう。
・マイナンバーカード
マイナンバーカードがない場合はマイナンバーや本人確認ができる資料を持参する必要があります。
・写真2枚
マイナンバーカードがあれば省略できます。
・本人名義の預貯金通帳等
失業手当などの振込先として指定したい口座の通帳を持参しましょう。ネット銀行等で通帳がない場合は事前にハローワークへ相談したほうが良いかもしれません。
2.ハローワークで手続きをする
必要書類がそろったら、住所地を管轄するハローワークで「求職の申し込み」をしましょう。
初回手続きでは窓口で離職理由の確認などがあります。
実際の受給に関する最初のステップとして「7日間の待期期間」があります。これは失業状態であることを確認するための期間です。この間にアルバイトを含めなにかしらの仕事をすると失業していないこととなり、待期期間が伸びる場合がありますので注意しましょう。
3.雇用保険受給者初回説明会に参加する
受給資格決定後、雇用保険に関する説明会があります。失業手当受給についてのルールや、もしも不正を行ったときのことなど、非常に重要な説明があります。
4.失業認定日にハローワークに行く
失業手当を受給するためには原則として4週間に一度ハローワークへ行き「失業の認定」を受ける必要があります。これは、今回の認定日までの過去4週間「仕事がなかった」ことと、「きちんと求職活動を行った」報告や、働く意欲と能力があることの確認という意味が含まれています。失業期間中はハローワークや一般の求人情報等を確認して求人に応募したり、ハローワークの窓口で求職に関する相談をしたり、スキルアップをするといった活動が求められます。
失業認定日は原則として必ずハローワークに行く必要があります。
ただし、病気やケガなどでやむを得ない理由でどうしても行けない場合はできるだけ事前にハローワークへ連絡を入れ、認定日の変更が可能か確認しましょう。
5.失業手当が振り込まれる
失業手当は、失業認定日から1週間ほどで指定の口座に振り込まれます。ただし離職理由によって初回振込みまでの期間が異なります。
・一般離職者、特定理由離職者(一定の有期雇用の場合を除く)の場合
7日間の待期期間のあと、さらに1か月の給付制限期間があります(過去5年以内に2回以上一般離職者として受給資格決定を受けた場合、3回目からは原則として制限期間は3か月となります)。制限期間は失業手当を受給できませんが、失業の認定は受ける必要があります。第一回失業認定日に認定を受けたあと、4週間ごとの失業認定日にハローワークへ行くと、給付制限期間後の日数に対して失業手当を受け取れるようになります。初回振込みまでおよそ2か月強かかる点を認識しておきましょう。
・特定受給資格者(一定の有期雇用の場合を含む)の場合
7日間の待期期間後から失業手当の給付対象期間となるため、通常は第一回の失業認定日の1週間後に初回の失業手当が振り込まれます。
注意点としては、給付日数分すべてを受け終わるまでの受給期限が、原則として離職から1年間という点です。
例えば給付日数が240日(実質8か月)の人が、退職からしばらくゆっくり休みたい…と半年間ハローワークに行かずにいると、1年の受給期限まで残り6か月になります。そこからハローワークへ行って、待期期間や給付制限期間を経て受給したとしても、実際に受給できるのは180日未満となってしまいます。1年間の受給期間を逆算して動くことを忘れずに。
なお、病気やケガ、妊娠、出産など様々な事情ですぐに求職活動ができないケースもあると思います。その場合は退職後、早めにハローワークへ相談に行くことをおすすめします。事情により最大3年間等受給期間を延長できます。
失業手当受給中のアルバイトは禁止?
失業期間中にアルバイト等をした場合は失業認定日の手続きの際、◯月◯日は働いたという印をつけるようになっています。その日の仕事が4時間未満の場合は減額支給となり、それ以上だとその日は失業手当が出ませんが、出なかった日数は温存され、その後の失業認定日に充てられますから消えてしまうわけではありません。
また、念のため、働いたことを伏せて失業手当を受給する…、要は不正受給をした(「しようとした」も含む)場合は処分対象となるため絶対に避けましょう。悪質なケースでは本来の失業手当の額を返金するだけでなく、ペナルティとしてその2倍を加え、合わせて本来の3倍の額を納付しなければならない場合があります。
再就職手当の受給条件と受け取り方法
失業手当を受給できる人が早めに再就職すると「再就職手当」を受給できる場合があります。
具体的には支給日数を3分の1以上残して再就職した場合は残日数の60%分、3分の2以上の場合は残日数の70%分を一時金で受給できます(日額には上限があります)。
再就職すれば給与を受け取れますし、さらに雇用保険からの一時金ももらえるとしたら、再就職しないよりも手元にお金は多く入ってくることになります。せっかくなら再就職手当を活用してみてはいかがでしょうか。また、再就職だけでなく自分で事業を開始した場合でも要件を満たせば再就職手当を受給できる可能性があります。
・再就職手当の受給条件
再就職手当を受給するためには、勤務期間が1年を超える安定した職業につき雇用保険の被保険者になるといった要件があり、要件を満たさない場合は受給できません。該当しそうな場合は事前に確認しておくと良いでしょう。
なお、失業手当受給の期限である離職から1年までの日数が、支給残日数よりも短い場合、受給期限までの日数を残日数として3分の1(3分の2)以上あるかどうかを判断されます。この点からも、再就職への活動開始は退職からあまり日を置かずにスタートしたほうが安全と言えます。
・再就職手当の受け取り方法
再就職手当を受け取る手続きは就職の翌日から1か月以内に行う必要があります。就職先の会社に書いて頂く書類もあるため早めに手続きに着手して提出することが重要です。平日にハローワークへ出向くのが難しいときは郵送や代理人による手続きも可能です。
その他、再就職手当だけでなく、再就職から6か月間の給与が、今回失業手当を受給することとなった退職をした会社(通常は前の会社)の給与と比べて少ない場合、就業促進定着手当を受け取れるケースがあります。
まとめ
失業手当は退職後、再就職に向かって努力する人を応援するための大切な制度です。受給には、退職前の被保険者期間の長さや、離職理由、離職中の求職活動などさまざまな要件を満たす必要があります。また、失業手当を受給できるとしても、自己都合退職の場合は給付制限期間があるため手続き開始から受給までに、短くても2か月以上かかることを踏まえて事前の資金計画をしておくことが重要です。受給中はハローワークへ行く日などしっかり確認して忘れないようにしましょう。
また、途中で病気やケガなどで長く働けない期間が発生したり、さまざまな悩みが発生することも考えられます。困ったときは遠慮なくハローワークへ相談しましょう。
離職から1年以内に受け切らなかった場合、残日数は受給できないといった点も注意し、受給期限を踏まえて計画的に手続きを進めましょう。
最後に、早期に再就職したほうがご自身の資金計画としても良い面があります。再就職の条件が概ねマッチするようなら再就職手当を受給できるように早めに就職するのも視野に入れて活動することをおすすめします。
- この記事の情報は2026年5月時点


ファイナンシャルプランナー(CFP®)、社会保険労務士、終活カウンセラー、キャリアコンサルタント)
中村 薫(なかむら かおる)
1990年信用金庫に就職。アメリカへの短期留学、大手生命保険会社での営業、損害保険会社代理店業務を経験した後、1997年に独立系FPとして開業、2015年に社労士として開業。リタイア前後のライフプラン・キャリアプランをテーマとした企業研修や個人のご相談を多く受ける。お一人様女性からのご相談は年齢を問わず行っている。障害年金、遺族年金、老齢年金のご相談や手続き業務は累積5000件を超え、金融機関での年金研修もリピートを頂いている。メディア出演、取材協力等:日本経済新聞、NHKクローズアップ現代、日本テレビ ニュースZERO他
