三大疾病は生命保険で備えるべき?メリットやデメリット、向いている人を解説
公開日:2026年1月8日

日本人の死因の半数近くを占める三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)。発症すると、長期にわたる治療や高額な医療費が必要となるだけでなく、働けなくなることで収入が大きく減少するリスクも高まります。ご自身やご家族の生活を守るためには、これらの経済的リスクにしっかりと備えることは大切です。生命保険の中には、こうした三大疾病に特化して備えられる保険があります。
本記事では、三大疾病に備えられる生命保険のメリットとデメリットを解説し、保険での備えはどのような人に向いているのかをお伝えします。三大疾病のリスクを正しく理解し、最適な備えを見つける参考にしてください。
三大疾病とは?
三大疾病とは、がん・心疾患・脳血管疾患の3つを指します。いずれも発症すると治療が長く続いたり、医療費が大きく膨らんだりすることがあります。働く世代なら、発症すれば仕事を休まざるを得なくなり、収入が減ってしまう可能性もあります。このようなことから、三大疾病は心身だけでなく家計にも大きな影響が出やすいという特徴があります。
図表1は、国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2025)」をもとにした、日本人の死因の上位5位(総数・男性・女性)をまとめたものです。三大疾病は男女問わず死因の上位にあり、誰の身にも起こり得る病気であることが分かります。
・図表1 日本人の死因順位(第1位~第5位) 2023年
出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2025年版)」をもとに筆者が作成
次に、それぞれの病気についてもう少し詳しく見ていきましょう。
■がん(悪性新生物)
がんは、細胞の遺伝子に傷がつき、異常な細胞がどんどん増殖して広がっていく病気です。厚生労働省の「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、がんは1981年以降、日本人の死亡原因の第1位です。2024年は全死亡者に占める割合は23.9%となっています。
また、国立研究開発法人国立がん研究センター「最新がん統計」によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男女ともに2人に1人で、日本人ががんで死亡する確率は、男性が4人に1人、女性が6人に1人です。がん罹患数の順位を部位別に見ると、男性では前立腺、大腸、肺、胃、肝臓の順で、女性では乳房、大腸、肺、胃、子宮の順となっています。
■心疾患
心疾患とは、心臓に何らかの障害が起き、血液が体内を十分に循環できなくなることで引き起こされる病気のことをいいます。代表的なものとして、狭心症や心筋梗塞、心不全、不整脈などがあり、生活習慣病(高血圧・糖尿病など)が深く関係するといわれています。
前述の人口動態統計によると、心疾患は1985年に脳血管疾患にかわり、日本人の死因の第2位です。2024年は全死亡者に占める割合は14.1%となっています。
心疾患は突然発症することもあり、発作が起きたときに命に直結する危険性があるのが大きな特徴です。
■脳血管疾患
脳血管疾患とは、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳の働きに障害が起きる病気のことです。代表的なものには、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などがあります。
前述の人口動態統計によると、脳血管疾患による死亡は1970年をピークに低下傾向が続いています。2024年の全死亡者に占める割合は 6.4%で、日本人の死因の第4位となっています。
三大疾病は生命保険で備えた方が良い?
三大疾病のリスクに対してどのように備えるかは、ライフプランを考えるうえで多くの方が一度は向き合うテーマといえます。備え方の一つとして生命保険がありますが、必要かどうかを検討してみるという姿勢が大切です。ここでは、検討の材料となるように、患者数・治療期間・費用・収入面の4つの視点で三大疾病のリスクを整理していきます。
■入院・通院患者数が多く、医療費がかかる可能性が高い
厚生労働省「令和5年(2023年)患者調査」では、調査日1日間で約118万人が入院治療を受け、約728万人が外来で受診しています(図表2)。
入院患者数では、脳血管疾患とがんが全入院患者のそれぞれ1割近くを占めていますが、三大疾病で約23%、4~5人に1人が1日で入院している計算です。外来患者数では、三大疾病で全体の約5%、20人に1人が通院している計算です。
これだけ多くの患者が三大疾病の治療を必要としている事実は、発症すれば医療費が継続的にかかる可能性が高いことを示しています。
・図表2 三大疾病の推計患者数(入院・外来)と割合
出典:厚生労働省「令和5年(2023年)患者調査」より筆者が作成
■治療期間が長期化しやすく、医療費負担が大きい
三大疾病は治療が長期にわたり、医療費が積み重なりやすい点も特徴です。厚生労働省の「令和5年 患者調査」による平均入院日数は以下の通りです。
・がん(悪性新生物):14.4日
・心疾患(高血圧性除く):18.3日
・脳血管疾患:68.9日
特に、脳血管疾患の平均入院日数は約2か月半と長く、手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残る場合には、その後のリハビリや通院も長期にわたります。また、同調査では、近年のがん治療は、外来(通院)で治療する人が増加しているという結果もあります。
公的医療保険の高額療養費制度が適用される場合であっても、入院や通院の期間が長引けば経済的な負担は軽くないため、十分な蓄えがないと不安が大きくなるでしょう。
■先進医療など保険適用外の費用が発生する
三大疾病の治療では、一般の保険診療だけでなく、先進医療や自由診療など公的医療保険が適用されない治療法を検討する場合もあります。例えば、がんの陽子線治療や重粒子線治療といった先進医療の技術料は全額自己負担です。高額なものであれば、技術料だけで数百万円もの費用が自己負担となります。
さらに、先進医療以外でも差額ベッド代(個室利用料)や遠方の病院への交通費、治療に伴う食事代など、公的保険でカバーされない費用が多々発生します。
■発症後の収入減少や生活費負担のリスクがある
三大疾病のもう一つの特徴は、治療のために働けない期間が生じやすいことです。国立研究開発法人国立がん研究センターの「患者体験調査報告書 令和5年度調査」では、働くがん患者のうち、治療のために休職・休業した人は53.4%、退職・廃業に至った人も19.4%にのぼりました。つまり、半数以上が仕事を一時中断し、約2割は職を失っていることがわかります。退職や廃業にまで至らなくても、長期の休職中は収入が大幅に減ったりゼロになったりします。実際、同調査では「金銭的な負担により生活に影響があった」と答えた人が約24.2%となっています。
三大疾病に備えた生命保険のメリット
三大疾病に備えた生命保険には、治療や療養に伴う経済的な不安をやわらげるための仕組みが整っています。医療費だけでなく、生活費や通院費などにも使えるため、いざというときの選択肢を広げられる点が特徴です。
ここでは、三大疾病に備えた生命保険を検討する際に知っておきたい、主なメリットを紹介します。
■まとまった一時金を受け取れる
三大疾病に備えた生命保険には、大きく「従来型」と「新タイプ」の2種類があります。どちらも、発症したときにまとまった一時金を受け取れる仕組みとなっています。一時金の金額は契約内容によって異なりますが、使い道は自由なため、治療費や生活費など幅広く活用できます。
ただし、従来型と新タイプでは、給付までの条件に違いがあります。
>従来型
・がんは、診断確定時に給付される
・心疾患・脳血管疾患では、所定の状態が一定期間続いた場合または治療のために手術を受けた場合に給付される
>新タイプ
・がんは従来同様、診断確定時に給付される
・心疾患・脳血管疾患は、治療のために入院または手術を受けた時点で給付される
・複数回にわたり一時金が受け取れる
従来型は発症直後は給付の対象にならないことがありますが、新タイプは発症初期の段階から給付されやすく、初期費用への対応がしやすくなっています。
■長期の治療費に対応できる
三大疾病は、以下の理由で医療費負担が大きくなるケースも珍しくありません。
・継続的な通院・検査・薬代が必要
・再発・転移(がんの場合)のリスクがあり治療が長期化する
・入院と外来を繰り返すケースも多い
・治療に並行してリハビリが必要になる場合もある
これらは治療が長引くほど増えるため、負担は決して小さくありません。まとまった一時金は、長期治療の経済的負担を軽減する助けになります。
■働けなくなった場合の生活費を補える
三大疾病の治療で仕事を長期間休むと、収入が減る可能性があります。特に自営業やフリーランスは、公的医療保険の傷病手当金がないため、「休業=収入ゼロ」となりかねません。
三大疾病に備えた生命保険の一時金は、治療と仕事の両立が難しい時期の生活費として使うことができます。例えば、家賃や住宅ローン、教育費、食費・光熱費などの固定費に充てることで、治療に集中しやすい環境を整えられます。
■先進医療や自由診療にも活用できる
先述のとおり、三大疾病の治療では、状況に応じて先進医療や自由診療が選択肢に入ることがあります。これらは公的医療保険が適用されず、全額自己負担となるため、費用面で利用をためらうケースも少なくありません。三大疾病に備えた生命保険の一時金は自由に使えるため、こうした保険適用外の医療にも充てられ、治療の選択肢を広げる助けになります。
三大疾病に備えた生命保険のデメリット
三大疾病に備えた生命保険は、治療費や生活費のサポートとして役立つ一方で、いくつか注意しておきたい点もあります。加入を検討する際は、メリットだけでなくデメリットも理解したうえで、自分に必要な保障かどうかを見極めることが大切です。
ここでは、三大疾病保険を選ぶ際に知っておきたい主なデメリットを紹介します。
■保険料の負担が大きくなることもある
三大疾病に備えた生命保険といっても、各保険会社から特色のある保険が販売されており、保障内容が手厚いと保険料は高くなります。保険期間は終身型か定期型か、貯蓄性はあるのか(解約返戻金の有無)、一時金の金額はいくらまで設定できるのか、どういった特約が付けられるのかなどによって保険料が大きく変わるため、商品ごとの違いを比較することが重要です。
■支払事由や条件が限定されている
三大疾病に備えた生命保険は、先述のとおり大きく分けて2つのタイプがありますが、保険会社ごとに給付の条件が決められています。特に従来型の場合、心疾患と脳血管疾患では、どういう状態が何日以上続くかがポイントになります。保険が使える場面を約款等で確認し、正しく理解しておきましょう。
■他の保険と保障が重複しやすい
すでに医療保険やがん保険に加入している場合、三大疾病に備えた生命保険に加入すると、保障内容が重なることがあります。例えば、がん保険に加入している場合は、がん保障が重複します。医療保険に三大疾病特約を付けている場合は、保障が過剰になっていることも。どちらの場合も、手厚い保障となる分だけ保険料の負担が増えることになります。
三大疾病に備えた生命保険を検討するときは、すでにカバーされている部分はないかを確認することが大切です。
三大疾病に備えた生命保険に向いている人は?
三大疾病に備えた生命保険は、すべての人に必ず必要というものではありません。ここでは、加入を検討すると安心につながりやすい人の特徴を紹介します。
■三大疾病のリスクに備えたい人
がん・心疾患・脳血管疾患は、日本人がかかりやすい代表的な病気です。生活習慣だけでなく、家族歴や遺伝的な要因もリスクを高める要因とされています。リスクが高い病気に対して準備をしておきたい人や家族に三大疾病になったことがいる人、健康診断などで生活習慣病の指摘を受けた人は加入を検討するとよいでしょう。
■自営業者やフリーランスなど収入保障がない人
営業やフリーランスの人は、会社員とは異なり公的医療保険の傷病手当金がありません。そのため、三大疾病で長期間仕事を休むことになった場合、生活にかかる支出や事業にかかる費用をすべて自己資金で賄う必要があります。三大疾病に備えた生命保険で受け取れる一時金は、治療費だけでなく生活費や事業の維持費(家賃・仕入れなど)などに使えるため、働けない期間の支えとなります。
■十分な貯蓄がなく医療費に不安がある人
貯蓄が十分でない場合、三大疾病を発症したときの医療費や生活費が大きな負担になることがあります。高額療養費制度によって自己負担額は一定まで抑えられますが、公的医療保険の対象外となる治療を受けたり長期治療が続いたりすると、まとまった支出が重なる可能性があります。
そのため、貯蓄が少なく大きな出費に不安がある人や、緊急時にすぐ使える資金が少ない人、医療費が重なったときの家計への影響が心配な人は、三大疾病に備える生命保険を検討するとよいでしょう。
まとめ
三大疾病とは、がん・心疾患・脳血管疾患のことで、日本人の死因上位を占める病気です。三大疾病に備えた生命保険に加入しておくと、診断時などに受け取れる一時金を治療費や生活費に充てられるため、急な出費への備えとして役立ちます。ただし、保険料や給付条件が商品ごとに異なることなど、注意すべき点もあります。加入を検討する際は、自身のライフプランや貯蓄状況、働き方、公的制度でどこまで備えられるかといった視点から、必要性を総合的に判断しましょう。
この記事の情報は2025年11月時点


ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、定年力アドバイザー、相続手続カウンセラー
中山 弘恵(なかやま ひろえ)
生活に関わるお金や制度をテーマにした講師業務、執筆業務、個別相談業務に従事。「わかりやすく丁寧なセミナー」「ストレスなく読み進められるわかりやすい文章」「安心しながら気軽に話せる相談相手」として定評がある。
