生命保険の保障額5,000万円は多い?保障額・保険料の平均値や保険の選び方を紹介!
公開日:2025年10月15日
生命保険を検討する際、「保障額はいくらにするべき?」と悩む人は少なくないでしょう。死亡保険は、病気やケガで亡くなったときに、死亡保険金として1,000万円や5,000万円といったまとまった金額を遺族が受け取れます。万一のことがあっても配偶者や子どもの生活費、教育費を確保できるため、一家の働き手に適した保険です。しかし、死亡保険の保障額が大きすぎると保険料の負担が増えますし、逆に少なすぎれば遺族の生活に不安が残るため、保障額をいくらに設定すべきか、多くの人が悩んでいます。そこで本記事では、生命保険の保障額の平均値や、必要な保障額の決め方、保険の選び方のポイントなどを解説します。
※本記事についてのご注意
生命保険(死亡保険)の保障額が5,000万円は多い?平均はいくら?
もし友人から「生命保険の保障額を5,000万円に設定した」と聞いたら、多くの人は「かなり高額だ」と感じるのではないでしょうか。必要な死亡保険金額は、家庭の状況によって異なります。そのため、友人と自分を比べる必要はありません。
とはいえ、自身と似た状況にある人がどのくらいの死亡保障を備えているのかを知っておくと、生命保険を検討する際に参考になります。そこで、生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2024年度)」の調査結果を紹介します。年齢や収入、ライフステージごとの平均額を見て、保険を検討する際の参考にしましょう。
全世帯の平均額
死亡保険金額の平均は、一世帯あたり1,936万円です。設定金額帯の分布を見ると、最も多いのは500万~1,000万円で、11.6%を占めています。次いで2,000万~3,000万円が10.8%、1,000万~1,500万円が10.5%の順です。
■世帯の普通死亡保険金額の分布
※その他、「不明」が31.1%
※民保(かんぽ生命を含む)、簡保、JA、県民共済・生協等を含む
(資料:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2024年度)」をもとに執筆者作成)
5,000万円以上を設定している世帯は全体の5.5%程度となるため、もし5,000万円の死亡保険に加入したら、「一般的な家庭よりも設定額が高い」と言って間違いありません。ただ、1億円以上を設定している世帯もあるため、自身に合っているかどうかを見極めることが大切です。
世帯主の性別ごとの平均額
死亡保険金の平均額を世帯主の性別ごとでみると、男性が世帯主の場合は平均2,015万円、女性が世帯主の場合は1,333万円でした。世帯主が男性であるほうが、高めの保障額を設定する傾向があることがわかります。
設定が多い保障の金額帯を見ると、男性は500万~1,000万円、女性は200万~500万円が最も多くなっています。
ただ、本来は性別で必要な保障額が変わることはありません。「養っている家族がいるか」など、自身の状況に合わせて必要保障額を考えるようにしましょう。
世帯主の年齢別の平均額
次は、世帯主の年齢別の死亡保険金額を紹介します。30代~50代前半は平均2,300万~2,500万円と、他の年齢層よりも高い水準です。50代後半は少し低くなり、2,103万円です。60代や70代になると、約1,500万円や1,000万円前後まで低くなります。
このデータからは、30代~50代前半の子育て世代は生活費や教育費への備えを重視するため保障額が高めであるものの、子どもが独立する時期になると保障を縮小する傾向があることが伺えます。
世帯年収別の平均額
世帯年収別の平均額を見ると、世帯年収が高いほど、死亡保険金額も増える傾向があることが示されています。
年収200万円未満の世帯は平均876万円ですが、年収1,000万円以上の世帯では3,090万円まで上昇します。生活水準に比例して万一のときに必要な生活費も高まるため、保険金額を大きく設定していると予想されます。
ライフステージ別の平均額
最後に、ライフステージ別の死亡保険金額を見てみましょう。夫婦のみの世帯と、子どもがいる世帯を比べると、子どもがいる世帯のほうが、死亡保険金額が多いことがわかります。また、夫婦のみの世帯でも、40歳未満よりは40歳~59歳のほうが保障額は高くなっています。また、60歳以上は保障額が少なく、なかでも仕事を辞めて無職になっている世帯は保障額が低い傾向にあります。
つまり、子どもを育てている時期は万一に備えて保障を手厚くし、子どもが独立した後や仕事を退職した後は、保障額を抑えるのが一般的であることが示されています。
■ライフステージ別の死亡保険金額
(資料:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2024年度)」をもとに執筆者作成)
必要な保障額の考え方
平均データを見て、年齢やライフステージなどに合わせて、保障額が変化する傾向があることが分かったと思います。ただ、平均額を見ただけで自身に必要な保障額を見極めるのは難しいです。死亡保険の必要保障額は、万一の際の不足額(支出見込額-収入見込額)で考えるのが一般的です。これを「必要保障額積み上げ方式」と呼びます。
ここからは、一家の働き手が亡くなった場合に必要となる主な費用を紹介します。ご自身の状況に当てはめて、必要な死亡保障額を考えてみてください。
家族の生活費
一家の働き手が亡くなると収入が減るため、毎月の生活費の一部を死亡保険金でまかなえるようにしておくと安心です。現在の生活費の7割程度が引き続き必要になる想定で計算しておくと良いでしょう。
たとえば、配偶者が働き始めたり、転職したりして生活費が十分稼げる見込みがある場合は、新しい生活に慣れるまでの「2~3年分の生活費」を用意しておけば良いと考えることができます。一方、子どもが小さい家庭では親の就労が制限されやすい点も考慮して、末子が独立するまでの生活費を重視しながら保険金額を設定すると良いでしょう。
また、遺族年金や手元の預貯金も、生活を支える資金になります。必要な保障額は、家庭のライフスタイルや遺族年金の受給金額、将来の収入見込みなどを踏まえて、調整するようにしましょう。
住居費
家族の住居費を確保することも考えましょう。住宅ローンを組んでいる場合は、団体信用生命保険(団信)に加入していれば、万一のときにローンの残債は完済されます。ただし、マイホームの維持費や将来のリフォーム費用なども発生する可能性があるので、考慮が必要です。
また、団信に入っていない場合や賃貸住宅に住んでいる場合は、家賃やローンの支払いが家計に重くのしかかる可能性があります。そのようなときは、住居費をカバーすることも考慮しながら、死亡保険金の保障額を検討すると安心です。
子どもの教育費
子どもの教育費は家庭にとって大切な支出であり、生命保険で備えておくべき代表的な費用のひとつです。
文部科学省「子供の学習費調査(令和5年度)」の調査結果によると、幼稚園から高校までをすべて公立に通った場合の学習費総額は平均で約596万円、一方で全て私立の場合には約1,976万円に達します。
さらに大学進学まで考えると、必要額はさらに膨らみます。国立大学であれば入学料が28万2,000円、授業料は年間53万5,800円が標準額とされています。私立大学の場合は大学や学部によって異なりますが、入学料・授業料ともに国立より高く、4年通う場合の総額は数百万円規模に及びます。
公立か私立か、大学進学に備えるかどうか等によって負担の大きさが変わるため、ご家庭の教育方針や子どもの人数に合わせて保障額を設定しましょう。
葬儀費用
葬儀を行う際にはまとまった費用が必要になります。一般的には100万~150万円程度かかるとされており、葬儀の形式によって相場は変動します。たとえば、規模の大きい一般葬では150万円を超えることも珍しくありませんが、家族葬であれば100万円前後、一日葬のように簡素な形式ではさらに低く抑えられる傾向があります。
相続税
相続税が発生しそうな方は、死亡保険金で備えておくのも選択肢の一つです。なぜなら、相続人が死亡保険金を受け取る場合は、「500万円×法定相続人数」まで非課税となる優遇制度があるからです。
相続税は、相続した財産が、負債や葬式費用、基礎控除額などの各種控除の合計額を上回る場合に発生します。たとえば、相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
必要に応じて、死亡保険金で相続税の納税ができるように準備しておくと安心です。
生命保険(死亡保険)の平均保険料
自分に必要な保障額がイメージできたら、無理なく支払い続けられる保険料に抑えることも考えながら、加入する保険を選びましょう。参考までに、保険料の平均額を紹介します。
一世帯あたりの平均年間払込保険料は、35.3万円です。分布を見ると、12万~24万円未満や12万円未満の世帯が多くなっています。つまり、多くの世帯は月1万~2万円台の保険料を支払っているということです。
■世帯あたりの平均年間払込保険料の分布
※その他、「不明」が19.8%
※民保(かんぽ生命を含む)、簡保、JA、県民共済・生協等を含む
(資料:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2024年度)」をもとに執筆者作成)
ただし、この平均額は、解約すると保険料の一部が戻ってくる終身保険や個人年金保険などの貯蓄タイプの保険も含まれた保険料です。保険料を抑えたい場合は、貯蓄タイプに比べて保険料が安く設定されている掛け捨てタイプの保険を検討するのも一つの手です。
生命保険(死亡保険)の選び方 | 保障額5,000万円は必要?
一般的には、5,000万円の保障は高額と言えます。しかし、「子どもが多い」「マイホーム(団信)がない」「遺族は働くことが難しそう」など、ご家庭の状況によっては5,000万円といった保障が必要になることもあり得ます。
しかし、保障額を高く設定すれば、保険料も高くなりやすいです。以下で紹介するポイントを踏まえて、加入する保険を選ぶようにしましょう。
自身や家族の状況、ライフイベントを踏まえて保障を考える
「結婚」「子どもの誕生」「子どもの独立」「マイホームの購入(団信の加入)」など、ライフイベントが発生すると、必要な死亡保障額も変化します。保険料の負担額が高くなりすぎないよう、必要な期間だけ保険に加入することや、必要な保障額に抑えることが大切です。
自身が保険に加入する目的や、必要な保障を明確にし、ライフイベントが発生するタイミングで適宜見直すようにしましょう。
複数の保険商品を比較する
たとえ同じ5,000万円の保障が欲しいという場合でも、定期保険と終身保険では、保険料も保障期間も異なります。複数のタイプの死亡保険を比較検討し、自分に合ったものを選びましょう。
また、保険商品の内容も、保険会社ごとに異なります。「保険金の給付方法(一時金か年金形式か)」「加入年齢の上限」「似たような保障内容でも保険料に差がある」など、商品ごとに特徴があるため、複数の商品を比較して選ぶことが大切です。
まとめ
養っている家族がいる人は、万が一の場合に備えて生命保険(死亡保険)に加入すると安心です。ただし、保障額が5,000万円という金額だと、平均と比べるとかなり大きい水準であり、すべての世帯に必要なわけではありません。自身に必要な死亡保障金額は、遺族が必要とする生活費や教育費の金額や、住宅ローン(団信)の有無、遺族年金や手元にある預貯金の金額などを踏まえて算出して確認することが大切です。
また、保険料は保障額に応じて増えるため、家計に無理のない範囲に抑えるようにしましょう。最終的には「自分と家族の生活を守るために必要な金額はいくらか」を基準に、複数の保険商品を比較検討し、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
※この記事の情報は2025年8月時点


ファイナンシャル・プランナー(AFPⓇ)。FP事務所マネセラ代表。(https://manesera.com/)
張替 愛(はりかえ あい)
「ひとつひとつの家庭にとっての最善策」を探すことを大切に、金融商品を販売せずに、年間100件近く相談を行う。専門分野は教育費・住宅購入・資産運用・ママのキャリアなど。コラム執筆や監修、オンラインマネー講座などでも活躍。2児の母でもある。
著書『~共働き800万円以下の夫婦でもハッピーライフ~プチ贅沢を楽しみながらムリなく資産を増やす』(ビジネス教育出版社