子どもに医療保険は必要?加入するメリットやポイントを解説
公開日:2025年10月30日

子どもの病気やケガに備えて医療保険を検討する際、「子どもに医療保険は必要なのか」「加入するメリットはあるのか」と疑問を持つ方も少なくありません。日本には子どもの医療費助成制度や高額療養費制度があり、多くの場合は自己負担が抑えられるからです。とはいえ、先進医療や差額ベッド代など、公的制度だけではまかなえない費用もあります。
本記事では、子どもが医療保険に加入するメリットや、加入率、検討する際のポイントなどをわかりやすく解説します。
子どもに医療保険は必要?
子どもの医療保険は必ずしも必要というわけではありませんが、公的制度だけではカバーしきれない出費に備えたい家庭にとっては、安心につながる選択肢となります。
日本では、国民健康保険や社会保険といった公的医療保険により、未就学児は医療費の自己負担が2割、小学生~69歳までは3割と定められています。さらに、各自治体では子ども医療費助成制度を設けており、健康保険が適用される医療費や食事代の自己負担分を、全額または一部助成する仕組みとなっています。そのため、一般的な通院や入院にかかる費用は、比較的軽く済むケースが多いのが実情です。
しかし一方で、差額ベッド代、先進医療、親の付き添い費用や収入減など、公的制度の対象外となる費用に目を向けると、経済的負担がないとは言い切れません。民間の医療保険は、こうした公的保険でカバーしきれない部分を補完することができるため、ご家庭の考え方やライフスタイルに応じて必要かどうかを判断すると良いでしょう。
子どもの医療保険の加入率
では、どのくらいの家庭が子どもの医療保険に入っているのでしょうか。
生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、子どもの生命保険に加入している割合は、45.9%でした。
保険の加入目的を見ると、「医療費や入院費のため」と答えた人が55.4%と最も多く、「万一のときの生活保障のため」(26.1%)や「子どもの教育・結婚資金のため」(22.8%)といった回答もみられます。
つまり、子どもの保険加入は半数近くにのぼり、多くの家庭が病気やケガによる医療費への備えを主な目的として選んでいることがわかります。
子どもが医療保険に加入するメリット
公的な助成制度が整っている中でも、子どもの医療保険に加入するメリットはどのくらいあるのでしょうか。ここでは、様々な観点からメリットを整理してみます。
■親の経済的負担を軽減できる
自治体の医療費助成があっても、入院が必要な病気やケガとなれば、何かと出費が発生します。
たとえば、個室や少人数部屋を利用した際の追加料金である差額ベッド代や、入院時の食事代、親が泊まり込んで子どもの世話をする付き添い入院にかかる費用などは、全額自己負担となるのが一般的です。
また、多くの自治体では子どもの医療費助成の対象となるのは高校卒業までであり、その後は助成が使えず、通常通り3割負担となります。
さらには、親が仕事を休むことで収入が減ったり、病院までの交通費や下の子をベビーシッターなどに預ける費用が発生することもあります。
医療保険に加入しておけば、こうした公的制度だけでは補いきれない出費をカバーでき、経済的な不安を和らげることができます。その分、親は子どもの治療をサポートすることに専念しやすくなる点が大きなメリットと言えるでしょう。
■将来の医療保障を確保できる
子どものうちに健康に問題がない状態で医療保険に加入しておけば、その後も医療保障を確保できるというメリットがあります。医療保険は加入時に健康状態の告知が必要なため、一度病気をすると加入を断られたり、一部保障の対象外となる条件が付いたり、割高な保険料になったりすることも少なくありません。
健康なうちに加入しておけば、大人になっても契約を継続できることが多いため、将来「医療保険に加入したくても入れない」というリスクを避けられます。
■先進医療に対応できる
医療保険に「先進医療特約」を付加しておけば、万一のときに症状に合った高度な治療を選択できる余地が広がるメリットがあります。
先進医療とは、厚生労働省が定めた高度な医療技術のことです。通常の医療費と違い、先進医療の技術料部分は公的医療保険の対象外で全額自己負担となるため、数十万~数百万円といった高額な費用がかかる可能性があります。
先進医療を利用する機会は決して多くはありませんが、先進医療の技術費を補償してくれる先進医療特約を付加しておけば、いざというときには家計への負担を大きく減らせます。高額な費用を気にせず治療方法を選べる点は、子どもを持つ家庭にとって安心につながるでしょう。
子どもが医療保険に加入する際のポイント
子どもの医療保険を検討する際には、「どこまで備えるべきか」「どの保険期間を選ぶか」など、悩むことが多いものです。ここでは、選ぶときに注意したいポイントを整理します。
■公的保障でカバーできない部分を補う
自治体の子ども医療費助成制度を活用しても、差額ベッド代や先進医療、入院時の食事代などは全額が自己負担となるケースが多いです。さらに、親が付き添う際の交通費や食費、休職による収入減といった間接的な費用もかかる可能性があります。
子どもの医療保険を選ぶときは、こうした「公的制度のすき間」を埋められるかどうかに注目することが大切です。
■保障内容と保険料のバランスを考慮する
保障を手厚くすれば、その分だけ保険料も高くなります。子どもの医療保険は、本当に必要な保障に絞り込むことを意識しましょう。
特に、兄弟姉妹がいる場合は、一人分だけでなく「家族全体でどのくらいの保険料負担になるか」も見ながら考えることが必要です。子どもの医療保険は長く続けるものだからこそ、無理なく支払える範囲に設定し、家計に負担をかけすぎないようにしましょう。
■目的に合った保険期間を設定する
子どもの医療保険には、主に「定期型」と「終身型」の2種類があるため、目的に応じて選択することが大切です。
子どもの間だけ備えられれば良い場合は、保険料が比較的安く、保障期間が限られている定期型が向いています。一方、大人になっても継続して保障を持ちたい場合は、保険料は高めになりますが、一生涯の保障が確保できる終身型が適しています。
・定期型と終身型の主な違い
子どもの医療保険の種類
子どもの医療保障を確保する方法には、いくつかの選択肢があります。それぞれの仕組みや特徴を知り、家庭に合ったものを選ぶようにしましょう。
■単独で加入する医療保険
親が契約者となり、子ども自身を被保険者として独立型の医療保険に加入する方法があります。子どもの年齢やライフステージに合わせて、保険期間や、入院給付金、手術給付金、通院給付金、先進医療特約などの保障内容を自由に設計できる柔軟性の高さが特徴です。また、子どもが成長して独立する際に、そのまま契約を継続できる点もメリットです。
■親の保険に付帯する医療特約
親が加入している生命保険や医療保険に、子どもの医療保障を特約として追加する方法もあります。保険料が比較的安く抑えられる傾向があり、契約の管理も一本化できるため、家計管理のしやすさが魅力と言えます。
ただし、あくまでも親の保険契約の特約であるため、親の契約が満期や解約を迎えると、子どもの保障も同時に終了してしまいます。また、単独で加入する場合に比べると自由に保障内容を設計できない点にも注意が必要です。
■学資保険に付帯する医療特約
学資保険は子どもの教育資金の準備を目的とする保険ですが、子どもの医療保障を特約でセットできる商品もあります。教育費と医療保障を一度に確保できるので効率的と言えます。
ただ、こちらも特約であるため学資保険の契約が終了すれば医療保障もなくなる点には注意しなければいけません。
教育資金の準備を重視しつつ、効率的に最低限の医療保障を確保しておきたい家庭に向いた方法です。
■共済の医療保障
子どもの医療保障は、共済で準備するという方法もあります。共済とは、組合員同士で助け合う相互扶助の仕組みに基づいた保障制度です。シンプルな保障内容を比較的安い掛金(保険料)で利用できるのが大きな特徴です。
家計への負担は抑えやすい一方で、保障額の上限が低かったり、特約の選択肢が少なかったりするため、十分な保障を求める場合には物足りない可能性があります。
まとめ
子どもの医療費は、公的な助成制度により自己負担が抑えられるものの、差額ベッド代や先進医療、親の付き添いにかかる費用などはカバーされません。医療保険に加入してこうした経済的な負担に備えておけば、子どもの治療に専念しやすくなるでしょう。また、子どもが健康なうちに医療保険に加入しておけば、将来も医療保障を持ち続けやすくなります。さらには、先進医療特約を付加しておけば、高度な治療を選べる選択肢も広がります。
保険を検討する際は、公的制度でカバーしきれない部分を補う必要最低限の設計にしたり、兄弟姉妹がいる場合は家族全体の保険料負担も考慮したりすると、家計と安心の両立がしやすくなるでしょう。「子どものうちだけ安心を確保したいのか」「将来の保障まで見据えるのか」といった目的も意識しながら、単独の医療保険や医療特約、共済などの中から、家庭に合った保険を選ぶことが大切です。
※この記事の情報は2025年9月時点


ファイナンシャル・プランナー(AFPⓇ)。FP事務所マネセラ代表。(https://manesera.com/)
張替 愛(はりかえ あい)
「ひとつひとつの家庭にとっての最善策」を探すことを大切に、金融商品を販売せずに、年間100件近く相談を行う。専門分野は教育費・住宅購入・資産運用・ママのキャリアなど。コラム執筆や監修、オンラインマネー講座などでも活躍。2児の母でもある。
著書『~共働き800万円以下の夫婦でもハッピーライフ~プチ贅沢を楽しみながらムリなく資産を増やす』(ビジネス教育出版社
