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シニア世代にがん保険は必要?加入率や必要な人・不要な人の特徴、選び方を紹介

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公開日:2025年8月15日

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がんの罹患率は年齢とともに上昇することが知られています。そのためシニア世代に入ってから、がん保険への加入を検討する人も少なくありません。しかし、がん保険はすべての人に必要なわけではないため、本記事ではシニア世代のがん保険加入率や、がん保険が必要な人と不要な人の特徴、がん保険を選ぶ際の注意点などを紹介しています。がん保険への加入を検討している方は参考にしてください。

シニア世代のがん罹患者数

公益財団法人がん研究振興財団の「がんの統計2025」によれば、年齢別のがん罹患者数は、60代前後から急増し、70代でピークに達して減少する傾向が男女ともに見られます。
特に70代前半の年齢層では、罹患者数が最大となり、男性109,295人、女性57,910人となっています。

<がん罹患 年齢階級内訳(2020)>
                                             (単位:人)
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公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計2025」より

シニア世代のがん保険加入率


公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査2024年度」によれば、シニア世代のがん保険などへの加入率は、60代前半は72.5%、60代後半は69.470代前半と後半ともに61.4です。
年齢による変化を見てみると、
50代後半をピークに年齢が上がるほど加入率が低下する傾向がみられます。また、時系列に比較してみると、2021年と2024年では、90歳以上の加入率増加が顕著です。

50代後半以降の加入率が低下する理由としては、「年齢とともに貯蓄が増えたので必要性を感じなくなった」、「子どもが独立したタイミングで保障内容の見直しを行った」、「高齢になると保険料が高くて家計への負担が大きい」、「既往症があったり、契約上の年齢制限をオーバーしているために加入が難しい」などがあるでしょう。

このほかに、「現役時代に勤務先を通じてがん保険の団体保険に加入しており、退職を機に解約してしまった」といったケースも考えられますが、そのまま放置せず現時点でのがん保険の必要性を再検討してみるとよいでしょう。また、「高齢期になると現役時代よりも医療費の自己負担割合が下がるから、治療費はそれほどかからない」と考えている人もいるかもしれません。確かに、70歳~74歳は原則2割、75歳以上は原則1割負担ですが、所得によっては2割や3割負担になるため、注意が必要です。

シニア世代のがん保険加入のメリット

シニア世代ががん保険に加入することにはどのようなメリットがあるのでしょう。

がん治療費に備えられる
がん治療には、手術や放射線治療、化学療法など複数の選択肢があり、組み合わせて行われる場合もあります。治療によって身体的にも精神的にも負担がかかりますし、治療費に加えて通院のための費用や入院中の保険適用にならない食事代や差額ベッド代などがかかる場合もあるため、経済的な負担も決して小さくはありません。

主に公的年金と貯蓄の取り崩しによって生活しているシニア世代にとって、がん治療によって貯蓄を大きく減らすと、治療を終えた後の暮らしに不安を抱えることになってしまいます。がん保険に加入していれば、その分治療費の負担軽減につながる点がメリットと言えるでしょう。

治療の選択肢を広げられる
がん保険に加入し、先進医療特約を付加していれば、高額な先進医療を受けてもその費用が補てんされるため、がん治療の選択肢を広げることができる点もメリットです。

先進医療とは、厚生労働省によって定められた新しい医療技術や治療法です。一定の安全性や有効性が認められてはいますが、公的医療保険の適用範囲外とされ、その技術料は全額自己負担となります。がんの先進医療には300万円前後もかかる高額なものもあるため、それが自費となると躊躇してしまうかもしれません。先進医療特約を付加することで、高額だからとあきらめることなく、より広範囲の選択肢から治療法を選ぶことが可能になります。なお、がん保険に付加できるのは、「がん先進医療特約」というがん治療を目的とする先進医療だけを保障する特約が一般的です。

シニア世代でがん保険加入が必要な人・不要な人の特徴

シニア世代でがん保険への加入が必要な人・不要な人の特徴を紹介します。

がん保険が必要な人

がん保険が必要なのは、貯蓄が十分にできていない人、お金のことを気にせずに治療に専念したい人、もしもがんに罹患した場合には先進医療も選択できるように備えておきたい人などです。

がん治療には手術や放射線治療、化学療法などの方法があり、その費用は決して小さくはありません。もしもがんに罹患してしまったらと考えると十分な貯蓄ができていない、という場合には保険に加入することでがん治療の備えになります。また、ある程度の貯蓄ができていても、その貯蓄を減らしながら治療を続けると、先々のことが心配になるかもしれません。お金のことを気にせず治療に専念したいと考える人には、がん保険が心強いでしょう。

さらに、公的医療保険が適用されない先進医療は治療費が高額になるため、もしもがんに罹患した場合には先進医療も選択肢に入れて治療法を検討したいと考えるなら、がん保険に加入するのは有効でしょう。

がん保険が不要な人
 一方、がん保険に加入しなくてもよいと考えられるのは、十分に貯蓄ができている人、すでに加入している医療保険などでカバーできる人などです。

治療費をまかなえるだけの貯蓄がある場合は、必ずしも保険で備える必要はありません。また、加入している医療保険にがん特約を付加するなどしてがんに備えている場合も、新たにがん保険に加入する必要はないかもしれません。

シニア世代のがん保険の選び方

シニア世代が過不足のない保険選びをするために、注目したいポイントや考え方を紹介します。

保障内容
がん保険には、入院日数に応じて受け取る「入院給付金」や所定の手術を受けた際の「手術給付金」のほか、がんと診断された際に受取る「がん診断給付金」、治療や抗がん剤治療などの所定の治療を受けた際の「がん治療給付金」、通院治療を受けた際の「がん通院給付金」、がんの痛みを和らげる治療を受けた際の「がん緩和ケア給付金」などさまざまな給付金があります。自分の心配事に合わせた保険を選ぶには、給付金の選択肢は多い方がよいでしょう。商品ごとに違いがあるので、比較検討するようにしましょう。

あれもこれもと保障を手厚くすると保険料が高額になってしまいます。公的年金や貯蓄とのバランスを考えて、無理なく払い続けることができる保険料かどうかにも注目しましょう。

保険期間
がん保険には、一定期間で満期を迎える「定期型」と、一生涯保障が続く「終身型」があります。保障内容を見直す必要がなければ、保障が途切れる心配がなく、保険料が変わらない「終身型」が安心でしょう。「定期型」は、当初の保険料は「終身型」よりも安い傾向がありますが、更新時に保険料が上がることをあらかじめ想定しておく必要があります。

シニア世代ががん保険を選ぶ際の注意点

シニア世代ががん保険を選ぶ際の注意点

加入可能な年齢を確認する
がん保険には商品ごとに加入できる年齢の制限が設けられています。そのため、シニア世代が新たに加入を検討する場合は、加入できる上限年齢を確認することが大切です。なかには80歳以上でも加入できる商品もあります。

ライフイベントを想定する
シニア世代は教育費や住宅ローンの支払いなどが終わり、家計が落ち着きやすい時期だといえるでしょう。しかし、高齢になった両親のケアや子どもの住宅購入時の支援、孫へのサポートなど、人によっては大きな支出が生じることもあります。ですから、シニア世代も今後のライフプランとそのための支出を想定しておくことが大切です。その上で、もしもがんに罹患した場合に、貯蓄から賄うか保険に加入するか検討し、備えができていると安心でしょう。

複数のがん保険を比較する
がん保険にはたくさんの種類があり、保障内容や加入できる年齢の制限、保険料などは商品ごとに異なります。
そのため、複数の商品を比べて、その中から自分にあったものを選ぶことが大切です。

まとめ

シニア世代にとって、年齢とともにがんに罹患するリスクが高まる傾向があることを踏まえて、がん保険で将来に備えることが大きな安心につながります。とくに十分な貯蓄がない場合や貯蓄の取り崩しを避けたい場合、がんに罹患した際に先進医療も選択肢として治療を受けたい場合などに有効な備えだといえるでしょう。

資産の状況や家族のライフイベント、治療方法や医療費に対する考え方など、さまざまな点を考慮して、がん保険に加入する必要があるか検討するようにしましょう。加入する場合には、複数のがん保険を比較して、納得できる保障内容や保険料の商品を選ぶようにしましょう。



※この記事の情報は2025年7月時点

プロフィール
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ファイナンシャルプランナー。
國場弥生(くにばやよい)

(株)プラチナ・コンシェルジュ取締役。証券会社勤務後にFPとして独立し、個人相談や雑誌・Web執筆を行っている。All Aboutマネーガイドも務めており、著書に「誰も教えてくれない一生お金に困らないための本 」(エクスナレッジムック)などがある。

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