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終身医療保険とは?特徴やメリット・デメリット、選ぶときのポイントを解説

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公開日:2025年3月19日

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終身医療保険に加入すると、一生涯にわたって保障を受けられ年齢を重ねても保険料が上がらないというのが大きな特徴です。一方で、医療保険には満期が決まっている定期医療保険もあります。医療保険の加入を考える際にはどちらを選ぶのと良いのでしょうか。本記事では、終身医療保険の加入を検討する際に押さえておきたい定期医療保険との違いやメリット・デメリット、終身医療保険を選ぶ際のポイントを解説していきます。

終身医療保険とは?

終身医療保険とは、民間の保険会社が提供する保険商品の一つで、病気やケガによる医療費の負担を軽減するためのものです。終身とあるように満期がなく、病気やケガをしたときの備えが一生涯続きます。医療保険に加入すると、入院や通院をした時、手術を受けた時などに給付金が受け取れますが、保障内容の詳細は保険商品によって異なります。医療保険の保障期間は、この終身型のほかに定期型もあります。まずは終身型と定期型の違いから見ていきましょう。

終身型と定期型の違い

終身型は、一生涯保障が続くのに対し、定期型は5年や10年などの一定の年数、または、50歳まで、60歳までなど一定年齢に達するまで保障されるといった保障期間が決まっている契約をいいます。定期型は保障期間終了後に同じ保障内容、同じ期間で更新できますが、更新すると保険料が上がるのが通常です。そのため、終身型は、一生涯にわたって保障を受けたいと考える人に、定期型は特定の期間だけ、または、一定の年齢になるまで保障がほしい人に向いています。

終身型 定期型
保険期間 一生涯 一定期間
保障内容 変わらない 更新時に見直せる
保険料 一定 更新毎に高くなる
払込期間 自分で設定 保険期間と同じ

保険料の払込期間

終身医療保険の保険料の支払方法は2種あります。一生涯保険料の支払いが続く「終身払い」と、一定の年数・年齢まで保険料を支払う「有期払い(短期払い)」です。終身払いは有期払いに比べて月々の保険料は抑えられますが、支払いは一生涯続きます。一方、有期払いは、限られた期間で保険料を支払うため月々の負担は終身払いより高くなるものの、年金が主な収入となる老後に保険料の負担がないのは利点です。ただし、もし将来的に医療保険を見直す可能性があるなら支払額の少ない終身払いが良いということにもなります。なお、終身払いの中には、保険料の支払いは続くが、一定年齢になると保険料が減額されるという保険商品もあります。

医療保険への加入は必要?

医療保険に入るべきか迷っている人もいるでしょう。医療保険を考える際には、まず公的医療保険制度を確認した上で検討することをお勧めします。この公的制度でカバーできない分が自己負担になりますが、それを預貯金から支払うことに不安を感じるようなら医療保険に加入して備えると安心です。 

ではここで公的医療保険制度について確認していきましょう。いわゆる健康保険からの給付のことですが、病院で治療を受ける際に支払う医療費は70歳未満の場合で3割負担です。仮に100万円の医療費が掛かっても30万円を負担すれば良いわけですから随分と助かります。とはいえ、30万円というのは決して安くありません。そういった高額な医療費が掛かった人への措置として、1か月の自己負担が一定額を超えるとその分は健康保険が負担する仕組みがあり、これを高額療養費制度といいます。負担の上限額は所得によって区分されており、一般的な所得水準では、8万円~9万円程度が自己負担の目安です。ただし、差額ベッド代や交通費、入院時の日用品代など保険適用の対象外となる費用もあり、それは全額自己負担となります。このような自己負担に不安を感じるなら、民間の医療保険に加入して備えることを考えましょう。

終身医療保険に加入するメリット

ここからは、終身医療保険のメリットを整理します。後述するデメリットも考慮したうえで自分に合う保険を選んでいきましょう。

一生涯にわたって保障を受けられる

終身医療保険は、一度加入すると解約しない限りは一生涯にわたって病気やケガによる入院や手術等に対する医療費の保障を受けられるのがメリットです。ただし、契約可能年齢が70歳までなどの要件や、健康状態に条件がある場合が多いため注意が必要になります。特に健康に不安がある場合は、健康状態の告知内容が少ない緩和型を検討するなど視野を広げて保険商品を選びましょう。

月々の保険料が変わらない

終身医療保険の保険料は、契約時の年齢で決まります。基本的に保険料は上がらず一定です。つまり若い時に加入した方が負担の少ない保険料で一生涯の保障が得られるということになります。定期型のように更新の度に保険料が上がることがないため将来の家計の見通しも立てやすいでしょう。

特定の状態になると保険料の払込みが免除される保険もある

特定の疾病や就労不能状態などになった場合、今後の保険料の払い込みが免除されるという保険もあります。例えば、がんや脳卒中、急性心筋梗塞といった三大疾病で「所定の状態」になった場合に払込が免除されるという具合です。所定の状態は、保険商品によって異なります。例えば、がんと初めて診断された場合、急性心筋梗塞となり60日以上働けない状態が継続した場合、脳卒中で言語障害が60日以上続いた場合を対象とするなどです。このように三大疾病のうち、がんは診断確定を払込免除の要件とする保険商品が一般的ですが、残す2つの疾病は保険商品によって大きく異なり、例えば入院日数が20日以上あれば良いタイプもあります。また、急性心筋梗塞を含む「心疾患」全般、脳卒中を含む「脳血管疾患」全般を対象とするなど範囲を広く設定している保険商品もあります。払込免除を付加する際は、免除される要件を丁寧に確認するのがポイントということです。
このような払込免除を付加しておくと、病気で働き方を見直し収入減となるような場合でも保険を解約しなくて済みます。何より保障があることによって治療を安心して受けられることを心強く感じるでしょう。

健康状態が良い場合の給付を用意している保険もある

終身医療保険の中には、一定期間、入院や通院、手術費用などの給付金を受け取ることがなかった場合に健康祝い金が受け取れる保険もあります。期間は1年毎、3年毎など保険商品ごとに異なり祝い金の額もそれぞれです。

終身医療保険に加入するデメリット

保険料が変わらず、一生涯の保障を得られる終身医療保険ですが、保険の見直しや加入時の年齢によってはデメリットもあります。ここからは終身医療保険のデメリットをみていきましょう。

保険の見直しが難しい

月々の保険料が変わらずに同じ保障が受けられるのが終身医療保険の魅力ですが、だからこそ見直したい時に悩ましく感じることもあります。一般に保険を見直すと年齢を重ねた分だけ保険料が上がるためです。せっかく保険料が一定なのに見直すことで負担が増えてしまい終身保険のメリットを生かせなくなります。ただし、医療技術は日進月歩です。また、医療機関での入院や通院における治療環境が変化することもあるでしょう。それによって加入している保障内容が色あせることも考えられます。そういった時はやはり見直すことも選択肢です。先々、保険の見直しをする可能性があるのなら、基本的な保障を終身医療保険で備えておいて、見直しがしやすい定期型の保険でそれ以外の保障に加入しておくという方法もあります。

定期医療保険と比較すると保険料が割高なこともある

加入時の年齢や保障内容が同じ場合、定期型の医療保険は保障期間が限られることから終身型より保険料は安くなります。そのため終身医療保険の保険料が割高なことはデメリットといえるでしょう。ただし、保険料の高い安いだけで判断するのは本末転倒です。そもそも保障がいつまで必要か、希望する保障期間を考えたうえで一定期間の保障で良いなら定期型、一生涯続く保障が必要なら終身型といった視点を優先しましょう。一生涯保障が必要なのに定期型に加入してしまうと、更新時に保険料の負担が増えてしまい、結果として終身型より支払い総額が多くなってしまいます。ただし、月々の収支で保険料のやりくりが難しいという場合は、まずは定期型に加入し、余裕が出てきたら終身型に入り直すという方法もひとつです。

加入時の年齢や健康状態によっては保険料が割高になる

加入する時の年齢によって保険料は決まりますが、中には、健康状態によって割高になる人もいるため注意が必要です。健康告知の内容は保険商品により異なり、例えば直近3カ月以内に医師の診察、検査、治療、投薬を受けたことがあるか?過去5年以内に入院や手術をしたことがあるか?健康診断で異常があるか?などが問われます。加入時の年齢や健康状態によって医療保険に加入できないこともあるため、保険加入や保険料のことだけを考えると若いうち健康なうちに加入する方が月々の保険料を抑えられます。

終身医療保険への加入がおすすめな人

そもそも病気やケガでの治療費は公的医療保険制度があり、自己負担分は貯蓄でカバーできるという人は医療保険に加入する必要はありません。そうでない場合は万が一に備えて保険を検討することになります。では、具体的に終身医療保険への加入がお勧めなのはどういった人でしょうか。

一生涯にわたって変わらない保障を受けたい人

老後もずっと医療保障が欲しい人は終身医療保険がお勧めです。年齢を重ねるほどに健康へのリスクは高まりますが、定期型医療保険は更新できる年齢に制限が設けられていることも多く、保険料も徐々に高くなるため家計を圧迫してしまいます。終身医療保険なら保険を契約している限り保険料は一定で加入時の保障内容が一生涯続くためいざという時に安心です。

将来的な保険料の負担を抑えたい人

終身医療保険は、一生涯保険料が変わらないのが特徴ですから、将来的に保険料の負担を抑えたい人に向いています。また、老後の保険料の負担が気になる人は、払い込みを60歳まで、65歳までなどと特定の年齢または期間で契約しておけば、年金生活となった時に保険料の払い込みをしなくて済み家計の負担を減らせます。

終身医療保険を選ぶポイント

保険料が同程度の医療保険でも、入院や手術の給付金、付加できる特約などはそれぞれ異なります。そのため一生涯の保障として何が必要か自分に合う保険を吟味することが必要です。ここからは終身医療保険の加入を検討する際に比較すべきポイントを見ていきましょう。

加入条件

年齢や既往歴によっては加入出来ない保険もあります。まずは加入できそうな保険をピックアップすることから始めましょう。また加入時の健康状態についての告知には注意が必要です。持病や病歴を申告せずに加入すると告知義務違反となり、いざという時に給付が受けられなくなる場合があるため正確に記入します。なお、健康に不安がある場合は、保険料は割高になりますが、持病や既往歴がある人向けの緩和型医療保険もあるので検討してみましょう。

入院や通院、手術に関する保障内容

保険商品によって、入院や手術の際に受け取れる給付金の金額や受け取れる日数・回数は異なります。例えば入院1日につき1万円などと入院日数に応じて給付金が受け取れるタイプは主流です。1入院で支払われる入院給付金の限度は60日型、120日型などがあり、保険期間を通じての通算支払限度日数も730日まで、1095日までなどと定められています。また、入院が短期化していることから入院日数に関係なくまとまった金額が受け取れる入院一時金タイプもあります。他には、入院だけでなく通院治療も保障されるか、日帰り入院や入院を伴わない手術も給付金を受け取れるかなども確認したいところ。基本となる保障内容では不十分と感じる時は、特約で手厚くできないか確認しましょう。

選べる特約の内容

基本の保障内容に特約を付加することで、保障内容を更に手厚くできます。ただし、特約を付けるとその分保険料は上がるため注意が必要です。不安要素を挙げるとキリがないため、自分で決めた予算内に収まるように保障内容を考える必要があります。特約は、国が承認する先進医療を受けたときに給付金が受け取れる先進医療特約、がん治療に関する特約、女性特有の病気への特約、健康だった場合にお祝いがもらえる特約などさまざまです。基本の保障内容に特約を付加することで保障を充実させることに加え、保険料はどの位増えるのかも確認しましょう。

保険料の金額と払込期間

同じ保障内容でも保険商品ごとに保険料は異なります。最近は気軽にネットで加入できるネット型の保険もあり、サイトで比較しながら検討することができます。店舗を設けず人件費が抑えられることから保険料が割安になることが多いようです。また、払込期間が一生涯続く終身払いのほかに、特定の年齢・期間で払込が終了する短期払い(有期払い)ができる保険もあります。払込期間が決まっていると、老後の限られた年金から保険料の負担をしなくて済み安心です。ただし、短期間で払い込むため、月の保険料は高くなります。自分の考えに合う方を選びましょう。

まとめ

終身医療保険は、病気やケガで入院や手術をする際の医療費について一生涯の保障が受けられる保険です。こういった民間の医療保険に加入していると、公的医療保険制度でカバーできない医療費の負担に備えられます。当然ながら医療保険は万一のための備えです。大きな病気やケガで給付金をもらうことになるかどうかは誰にも分かりません。何も起こらない方が喜ばしいことでもあります。どのように備えるのが安心できるかを考え、今後支払う保険料総額も鑑みながら無理のない範囲で加入しましょう。



  • この記事の情報は2025年3月時点のものです。
プロフィール
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ファイナンシャルプランナー(CFP®)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種

白浜仁子(しらはま ともこ)

1989年地方銀行に就職。結婚、出産を経て2008年より独立系FPとして始動。家計、資産運用、住宅購入、生命保険など幅広い視野でコンサルティングを行うライフプランの専門家。また、障害を持つ子の親亡き後問題やおひとりさまの終活サポートも行なっている。

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