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掛け捨て型の生命保険とは?特徴や貯蓄型との違いを解説

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公開日:2025年3月13日

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生命保険は、万一病気やケガ・死亡などのリスクが起こった時に、お金のことで心配せずに済むようにリスクヘッジができる金融商品です。必要な保障内容や保障額は、被保険者(保険に加入する人)の生活環境や希望によって異なりますが、家計からやりくりできる保険料は収入や扶養の状況などによって人それぞれ。生命保険には「掛け捨て型」と「貯蓄型」の2種類があります。具体的にどのような違いがあるか、この記事では、掛け捨て型の生命保険のメリット・デメリットや貯蓄型との違いを解説していきます。自分にあった保険を選ぶための参考にしてください。

掛け捨て型の生命保険とは

満期時の満期保険金や解約時の解約返戻金がない保険を「掛け捨て型保険」といいます。定期保険や収入保障保険が掛け捨て型の保険にあたり、契約期間中に死亡や高度障害状態になった場合、保険金が受け取れます。両者には受け取り方に違いがあり、定期保険は契約時に定めた保険金額を一括で受取るのに対し、収入保障保険は年金形式で受け取ります。ほかにも、医療保険やがん保険も掛け捨て型の保険が一般的です。医療保険は、病気・ケガで入院や手術を受けた場合に給付金が受け取れる保険で、がん保険は、病気の中でもがんに特化した保険で、がんと診断された時やがんで入院や手術等をしたときに給付金が受け取れます。

掛け捨て型保険 
定期保険 死亡時に保険金が一括で受け取れる
収入保障保険 死亡時に保険金が年金形式で受け取れる
医療保険 病気・ケガで入院や手術を受けた時に給付
がん保形 ガンと診断された時、がんで入院や手術を受けた時に給付

※一部、医療保険やがん保険で貯蓄型もあります。
資料:執筆者作成

貯蓄型の生命保険とは

一方、保障を得ながら貯蓄もできる保険が「貯蓄型保険」です。保険料の一部が積み立てられるため、途中解約をすると解約返戻金が、満期がある契約では満期保険金が受け取れます。貯蓄型保険の代表格は、終身保険や個人年金保険、学資保険です。終身保険は、保障が一生涯続く保険で、満期がないため満期保険金はありませんが、解約すると解約返戻金を受け取れます。ただし、解約時期によっては払込保険料を下回ることがあるので注意が必要です。個人年金保険は、契約時に定めた年齢になると年金が受け取れます。もし年金開始前に死亡した場合は、これまで払い込んだ保険料に応じて死亡給付金が受け取れます。学資保険は、子どもの進学にあわせて祝金や満期保険金が受け取れる保険です。親などの契約者が死亡した場合は、それ以降の保険料の払い込みが免除されます。

貯蓄型保険
終身保険 死亡時に保険金が一括で受け取れる。保障は一生涯
学資保険 子どもの入学や進学に合わせて教育資金・満期金が受け取れる
個人年金保険 老後の生活費等の準備が目的。年金形式で受け取れる

※一部、医療保険やがん保険で貯蓄型もあります。
資料:執筆者作成

掛け捨て型と貯蓄型の違い

それでは、掛け捨て型と貯蓄型のメリット・デメリットについてみていきましょう。

掛け捨て型の生命保険のメリット

掛け捨て型の保険は、満期保険金や解約返戻金がない分、保険料を安く抑えられることが大きなメリットです。また掛け捨て型は、保障が不要になった場合の解約や他に魅力的な保険が出てきた場合の見直しも容易です。

掛け捨て型の生命保険のデメリット

満期金や解約返戻金がないため、保障内容に該当することが起きなかった場合は戻ってくるお金がありません。また、契約者貸付制度という、解約返戻金の一部を保険会社から借り入れできる仕組みは掛け捨て型では利用できないこともあげられます。

貯蓄型の生命保険のメリット

貯蓄型は、満期時や解約時にお金が受け取れるのが特徴です。子どもの進学や老後資金などライフイベントでのまとまった支出に備えられます。また、貯蓄型は、商品によって契約者貸付制度が利用できることもメリットです。資金が必要だが保険は解約したくない、という時は契約者貸付制度で資金を準備することも可能です。

貯蓄型の生命保険のデメリット

掛け捨て型の保険より保険料が高いことがあげられます。これは、保障と積立ての両方の機能を備え持つためです。解約のタイミングによっては、解約返戻金が払込保険料を下回ることがあり、その点はデメリットといえるでしょう。また、利率が保障される利率固定型の契約では、将来インフレが続いた場合に受け取れる金額が実質的に目減りする可能性があることも知っておきたいところです。

掛け捨て型と貯蓄型のどちらがおすすめ?

ここまで掛け捨て型と貯蓄型のメリット・デメリットを見てきましたが、結果としてどちらを選べばよいのでしょうか。

掛け捨て型の生命保険が向いている人

掛け捨て型は、月々の保険料を抑えたいという人や、大きな保障が必要だが貯蓄型では保険料の負担感があるという人にお勧めです。例えば、子どもが生まれて間もない何かと物入りな人や、マイホームや車の購入を予定している人で頭金を貯めたいという人も掛け捨て型は選択肢になるでしょう。なお、住宅ローンを借りてマイホームを購入する時は、通常、団体信用生命保険(団信保険)に加入します。団信保険とは、死亡や高度障害など一定の状態になった時に保険金で住宅ローンの残債が一括返済される保険です。マイホーム購入後は、団信保険で一定の死亡保障が確保できるため、一般に既契約の死亡保険は減額できると考えます。掛け捨て型は保障の見直しがしやすい点については、掛け捨て型のメリットとして紹介したとおりです。その他、NISAiDeCoなど保険以外の金融商品で資産運用をしているという場合も、貯蓄型で備える必要性があまりないため掛け捨てが向いているといえるでしょう。

貯蓄型の生命保険が向いている人

一方、貯蓄が苦手で直ぐに払い出してしまうという人は、貯蓄型の生命保険が選択肢になるでしょう。貯蓄型保険を途中で解約すると保障がなくなってしまうことや、一定期間続けなければ解約返戻金が払込保険料を下回ってしまうことはデメリットとして紹介しましたが、見方を変えれば保険を続ける理由にもなるためメリットとも言えます。子どもの教育費や老後資金などの目標に向けて着実に準備ができるでしょう。なお、貯蓄型保険には、円より金利が高い外貨建て保険や、投資信託で運用できる変額保険など資産運用を重視した商品もあります。

生命保険を選ぶときのポイント

ここまで掛け捨て型保険や貯蓄型保険についてみてきました。では、実際に生命保険を選ぶときにはどのようなステップを踏めばよいのでしょうか。

必要な保障を明確にする

最初に、保険に加入する目的を明確にすることが大切です。「もし死亡した時に家族が生活で困らないように備えたい」「自分が病気やケガ、がんになった時に治療費を心配しなくて良いようにしたい」「子どもの教育費や老後資金に向けて準備したい」などです。ライフステージによって必要な保障は変化していきます。現状を踏まえて何に備えたいかを考えてみましょう。

保障期間を検討する

次に保障が必要な期間を考えます。例えば、「子どもが独立するまで死亡保障は加入しておきたい」「医療への備えは一生涯欲しい」などです。一般に、子どもが成長するとともに必要保障額は減っていきます。また、年齢を重ねると通常は貯蓄が積みあがっていくため、万一が起こっても手元の資金で対処できることも多いでしょう。そういった将来の家族の状況や貯蓄のことも考えながら保障期間を検討します。

保険金額を検討する

現在の貯蓄がいくらあるのか、もし不測の事態が起こったらいくら足りないのか、など家族の状況を考慮して保険金額を設定しましょう。保険金額を高めにすると安心に繋がりますが、その分保険料は高くなります。反対に保険金額が低すぎると、保険料は安くても万一の時に十分な保障が得られず困るかもしれません。死亡保障は、今後必要になる「生活費」「教育費」「住居費」などの支出総額から、今ある「貯蓄」や今後の収入見込みとなる「遺族年金」「配偶者等の給与や老齢年金」「死亡退職金」などを差し引き、不足分を保険で備えます。

保険料と払込期間を検討する

無理なく支払える保険料を検討し、予算の範囲で保障を得られるようにします。毎月2万円を保険料にまわしても良い人で、貯蓄型保険を希望するというケースで考えてみましょう。貯蓄型保険で十分な死亡保障が得られればそれが一番です。しかしそうでない場合は、割安な掛け捨て型も選択肢にする必要があります。例えば、積立型に1.5万円、掛け捨て型に5千円とすることで必要な死亡保障が得られるなどです。また、保険料の払い込み期間を延ばすことで毎月の負担を抑えられる場合もあるため、そういったことも念頭に検討してみましょう。

生命保険に関する注意点

最後に、生命保険の契約で注意したいことを紹介します。

健康状態によって加入できないことがある

生命保険は、契約時に健康状態を告知するのが一般的です。治療中の病気の有無や既往歴などについて審査されます。保険会社が、被保険者は病気になるリスクが高いと判断すると保険に加入できません。

保障内容を定期的に見直す

保険に一度加入したら安心という訳ではありません。年齢やライフステージによって必要な保障額が変わるためです。一般に死亡保障が最も必要な時期は、子どもの誕生時といわれます。子どもが大きくなり独立すれば高額な死亡保障はいりません。反対に年齢を重ねて病気やケガのリスクが高くなると、それらの備えをしたいと考える人もいるでしょう。ライフステージが大きく変わる時には、現在加入している保険を精査し必要に応じて見直しましょう。

解約は慎重に検討する

生命保険を安易に解約するのは禁物。解約後、新たに保険に入ろうとしても健康状態によっては加入できないことがあるからです。また、年齢が上がるほど加入時の保険料も高くなるため、解約前と同じ保障内容に新規で加入する場合でも保険料の負担は大きくなる可能性があります。また、貯蓄型保険は、解約のタイミングによって払込保険料を下回る金額しか受け取れないことがあるため、事前に解約返戻金がいくらになりそうか確認してから検討しましょう。

まとめ

掛け捨て型の生命保険は、満期保険金や解約返戻金がありません。しかし、貯蓄部分がないためその分月々の保険料が安く抑えられ、保障を見直しやすいというメリットがあります。一方、保障内容に該当することが起きなかった場合は戻ってくるお金がなく、解約返戻金を担保にした契約者貸付制度もありません。掛け捨て型と貯蓄型はそれぞれ特徴が異なります。加入する目的を明確にして自分にあった保険を選びましょう。



  • この記事の情報は2025年2月時点のものです。
プロフィール
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ファイナンシャルプランナー(CFP®)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種

白浜仁子(しらはま ともこ)

1989年地方銀行に就職。結婚、出産を経て2008年より独立系FPとして始動。家計、資産運用、住宅購入、生命保険など幅広い視野でコンサルティングを行うライフプランの専門家。また、障害を持つ子の親亡き後問題やおひとりさまの終活サポートも行なっている。

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