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がん保険の一時金1000万円は多い?選び方とポイントを解説

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公開日:2025年3月13日

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「がんになったら高額な医療費がかかったり、働けなくなったりして経済的負担が大きいのではないか」と不安を抱えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。がん保険には、がんと診断された場合にまとまった金額の一時金が出るという商品もあり、がんの治療や経済的負担に幅広く対応することが可能です。なかには1,000万円以上の一時金も可能という商品もありますが、一時金がいくら必要かは年齢や家族構成などによって異なります。この記事では、がん保険の一時金の金額を設定する場合の考え方や、がん治療にかかる費用、がん保険の選び方のポイントなどを解説します。

がん保険の一時金はいくらが適切?1,000万円は必要?

がんになった場合、治療費の負担だけでなく、治療のため今まで通り働けなくなる可能性もあります。このような場合に幅広く対応できるよう、がんと診断された場合の一時金(診断給付金)を重視したがん保険が多くあります。一時金は、数十万円~数百万円程度で選択できる商品が一般的ですが、中には1,000万円程度の高額の契約が可能な商品もあります。 

がんの治療費には預貯金で対応することもできますので、必ずしもがん保険が必要というわけではありません。ただし、働き盛りで子どもや養うべき家族がいる方など、なるべく貯蓄を減らすことは避けたい方もいらっしゃるでしょう。 

民間の医療保険に加入していれば、がんによる入院や手術も給付金支払いの対象となりますが、特にがんに対しての備えを手厚くしたい場合には、がん保険やがん共済が選択肢となります。このような商品で、がんと診断された場合の一時金を高く設定すると保険料も高くなりますので、一時金は高ければ良いというわけではありません。必要な保障額と保険料のバランスを考慮して一時金をいくらにするかを決めるとよいでしょう。 

公的な医療保険制度でがん治療を受ける場合、治療の自己負担額は年齢によって異なり、1割~3割となります。治療費が高額になった場合には、自己負担額を一定額以下に抑える高額療養費制度もありますが、長期にわたる治療で負担が大きくなり生活への影響が出てくることも考えられます。また、差額ベッド代や先進医療など、公的医療保険制度の対象外の費用が膨らむ可能性もあります。このような場合に備えてがん保険に加入する際には、がんになったらどのくらいの医療費がかかるか、生活への影響がどの程度あるかを考慮して、プランを決めましょう。

がん治療にかかる費用

がん保険のプランを検討するためには、がん治療の費用がどれくらいかかるのかを知っておく必要があります。ケースバイケースではありますが、全日本病院協会による医療費の調査によると、がんの種類別の入院費用は下表のとおりです。なお、下記の平均額は医療費の総額ですので医療機関窓口での負担額は所得や年齢により下記の1割から3割となります。

<がんの部位別治療費>

部位 1入院あたり費用平均額 1日の平均額
胃がん 994,478円 79,063円
結腸がん 906,668円 84,067円
直腸がん 1,096,120円 88,643円
気管支および肺がん 892,949円 112,011円
資料:全日本病院協会 医療費(重症度別)【年間】より執筆者作成


入院する場合には治療費そのもの以外に、さまざまな費用がかかります。例えば差額ベッド代は、個室の場合にのみかかると思われるかもしれませんが、2人~4人部屋でもかかる場合があります。厚生労働省の「主な選定療養に係る報告状況」によると、202371日時点の差額ベッド代の平均額は1日あたり6,714円でした。下表のように部屋の人数が少なければそれだけ差額ベッド代も高くなります。

<差額ベッド代の平均額(2023年7月1日時点)>

部屋の種類 1日あたりの差額ベッド代
1人部屋 8,437円
2人部屋 3,137円
3人部屋 2,808円
4人部屋 2,724円
平均 6,714円

資料:厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」より執筆者作成


また、入院時の食事代は、平均的な家計における食費をもとに厚生労働大臣が定めた標準負担額である1食あたり490円となります。住民税非課税世帯や難病患者の方などは、下表のとおりです。他に、通院のための交通費、退院後の通院にかかる治療費、投薬代、入院時の雑費なども考慮しておく必要があります。

<入院時の食事負担額>

区分 1食あたり負担額
一般の方 490円
難病患者、小児慢性特定疾病患者の方(住民税非課税世帯を除く) 280円
住民税非課税世帯の方 230円
住民税非課税世帯の方で過去1年間の入院日数が90日を超えている場合 180円
住民税非課税世帯に属しかつ所得が一定基準に満たない70才以上の高齢受給者 110円

出典:全国健康保険協会ホームページ


がん保険の加入率は?

生命保険文化センターの2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」によると、民間の生命保険会社やJA(農協)、県民共済・生協等で取り扱っている、がん保険・がん特約の加入率は39.1%とのことです。また、同調査による年代別、性別ごとのがん保険・がん特約の加入率は以下の通りとなっています。加入率のピークは、男女とも40代になっているのがわかります。

<がん保険・がん特約の加入率>

年代 男性 女性
20代 14.0% 21.9%
30代 42.9% 46.4%
40代 46.4% 50.6%
50代 45.5% 49.2%
60代 45.0% 38.2%
70代 30.0% 27.3%

資料:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」より執筆者作成

がん保険の一時金を1,000万円に設定するときの注意点

がんに備え、がん保険の一時金はなるべく多くしておきたいと考えるかもしれません。しかし、がんと診断された場合、1,000万円以上の一時金を受け取れる商品は多くはありません。自分ががんになったらいくら一時金が必要かを考え、備えたい金額を設定できる商品があるかどうかを確認しましょう。
年齢や性別が同じなら、受け取れる一時金を高額にすればするほど保険料は高くなります。ある保険会社のがん保険で、40歳男性の例で保険料をシミュレーションしてみた結果、がんと診断された場合の給付金を100万円とした場合の保険料は毎月約800円、同じ条件で1,000万円とした場合の保険料は毎月約8,000円となりました(いずれも契約から10年間のがんを保障する定期保険)。年齢が上がればさらに保険料の負担も大きくなりますので、一時金の金額をいくらにするかは、希望する一時金が本当に必要かどうか、また保険料とのバランスを考えて決めるようにしましょう。

がん保険を選ぶポイント

がんの治療方法は、時代とともに変化しています。入院を伴った手術での治療が中心だったこともありましたが、最近では通院で行われる放射線治療や、抗がん剤・ホルモン剤等の化学治療・薬物治療など、治療法も多様化しているため、がんに罹患しても通院で治療するケースも増えています。それに伴って、がん保険の保障内容も様々なタイプが増えてきました。

保障内容

・診断給付金(一時金)
がんと診断が確定された時に、数十万円~数百万円程度のまとまった金額で支払われるものです。1,000万円以上の一時金が契約可能な商品もあります。選ぶポイントは、診断給付金が支払われる回数に制限があるかどうかです。診断給付金が1回のみしか支払われない商品もありますし、複数回支払われる場合でも2回目以降は、初回診断時から1年~数年後といった条件があるのが一般的でしょう。また、上皮内がんの場合でも通常のがんと同額が支払われる商品もあれば、上皮内がんは1割程度になる商品もありますので、一時金の金額だけでなく、給付の内容もよく確認しましょう。

 
・治療給付金
がんと診断され、抗がん剤や放射線治療などの治療を受けたときに支払われる給付金です。月に1度などの一定期間ごとに、数万円~数十万円程度の給付金を定期的に受け取る商品が一般的です。選ぶポイントは、治療給付金の支払回数です。支払回数に制限がある商品もあれば、支払回数無制限のもの、特定の治療に関してのみ回数制限があるものもありますので条件をよく確認しておきましょう。また、治療給付金の支払いの対象は、がんの三大治療である手術・放射線治療・抗がん剤治療とする商品が一般的ですが、「抗がん剤治療特約」のように、治療の対象を絞って保障する商品もあります。また、三大治療だけでなく緩和ケアや公的医療保険の適用外の自由診療に対応する商品もありますので、対象となるがん治療の範囲はよく確認することをお勧めします。

 

・入院給付金
がんと診断され、がん治療で入院した際に1日あたり数千円~数万円程度を入院日数に応じて受け取ることができる給付金です。一般的には、入院日数は無制限ですが、制限がある商品もあります。

 

・通院給付金
診断が確定されたがんの治療目的で通院した時に支払われる給付金です。1日あたり数千円~数万円の通院給付金を通院日数に応じて受け取ることができるのが一般的です。選ぶポイントは、通院給付金の受け取りに「入院」が条件となっているかどうかです。最近は、通院のみでがんの治療を行うケースも増えているため、通院給付金の支払条件が入院を伴う通院とされていると、入院を伴わないがん治療では通院給付金は受け取れませんので注意しましょう。入院を伴わない通院も保障するがん保険なら、安心でしょう。また、商品によっては通院の日数や、通院の支払対象期間に制限がある場合もあります。 


がん保険のこれらの給付金は、主契約に特約として付帯することもできます。商品によって主契約は診断給付金の場合もあれば、入院給付金や治療給付金である場合もあります。保障内容をよく検討した上で、特約として自分に必要な保障は何かを見極めて必要な特約を選択していきましょう。一時金はそう高くない金額で設定し、治療給付金や通院給付金を付帯させることで、がん治療の費用に対応することも可能でしょう。一時金を高く設定する場合には、他の特約は絞るか、無しにするなどのメリハリをつけることで保険料を抑えることが可能です。 

また、給付金の保障期間も確認しておきましょう。一生涯の保障である終身契約ができる給付金もあれば、10年ごとに更新が必要な定期型の給付金もあります。定期型を更新する際は、更新時の年齢で保険料が再計算されて高くなるのが一般的です。

まとめ

がんにかかった場合、公的な医療保険の対象となる治療費の自己負担は1割から3割ですが、入院時の差額ベッド代や日用品など全額自己負担となる費用もあります。がん治療による一時的な収入の減少や、抗がん剤や放射線治療などの多様な治療にも対応できるよう、がん保険の一時金を多めに設定して備える方法もあります。ただ、設定可能な一時金の金額は保険商品によって異なりますし、その金額が必要かどうかも人によって異なります。また、一時金以外の特約を付帯してがんに必要な保障を確保することも可能ですので、がんにかかったときに必要となる費用や、すでに加入している他の医療保険なども踏まえてがん保険の一時金の金額を判断するとよいでしょう。

  • この記事の情報は2025年2月時点のものです。
プロフィール
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ファイナンシャルプランナー(CFP®)。一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

福島佳奈美(ふくしまかなみ)

将来のお金の不安をなくすためには、長期的なライフプランを立てて将来のマネープランを作ることと、日々の家計管理が必要だと実感。保険、住宅ローン、教育費、老後資金準備など、「誰からも教わらなかったけれど生活するうえで必要なお金の知識」を、マネーコラム執筆やセミナー講師、個人相談などを通じて伝えている。

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